ア 〜ー/〜ア (語基)「〜する人」;沖縄方言では以前から「アメリカー,ナイチャー」のようにア段長音化して人を示す名詞を作ることがあったが,今も生産性がある;サボリャー(さぼり魔),酒ヌマー(大酒飲み),アシバー(よく夜遊びする人),タンチャー(短気な人),イバラー(威張り屋)など(松森1994) アイタナイ 「会いたくない」;関西の中年以下はアイターナイ,アイタナイという;西日本一帯でもともとアイトウナイだった;「会イタカッタ」などの活用形とア段の音が揃って覚えやすい言い方に変化した;ただし10代はほぼ東海道沿線全体でアイタクナイに共通語化(井上1995.4,Q p.82) アオジ 「あざ」;愛媛の若年層(高橋1986a) アオタン 「打ち身のアザ」;アオタンデキタ;北海道の新方言として若者の間に急速に広がったあと,今は東日本各地,首都圏や大阪にも進出中;東京の中では,西の奥の氷川に多く,続いて下町に多い(荻野他1985,地平);この急速な伝わり方からみると,花札用語「青短」「青丹」からスラングとして普及した可能性も考えられる;見坊(1987)によると,刑務所内で使われていた;北海道(小野1987,1992,1993,石垣1983,川内谷1990:28);千葉県各地(平野 1992);新潟県上川村で若年層の一部に普及(新潟大1994);山梨県東南端でも10代で半数以上使用(成徳1991);大阪市高校生女子60%(岸江1988);大阪付近10代使用(近畿1994);永瀬1990a;新伝p.53/新資p.100〜,243,376/東神p.83/風景p.79/新日p.3,81,112,161,288,289;SFp.67;地平p.45f,p.60 赤カッテ/白カッテ 「赤くて/白くて」;金沢の若者の新方言;もともとはアコーテ,シローテだった(講座);過去の中止形の似た言い方は近畿/東海地方にもあるが,ここでは今の若者はあまり使わず,衰えている(Q218,219); アカナル 「赤くなる」;京都府北部/兵庫県北部の青年層に普及中(加藤1988);→ウ音便 アカマン 「赤くて大きなザリガニ」;1980年代に埼玉県鴻巣市の子供たち アクシャウツ 「あきれる/困り果てる」;バリアクシャ/アクシャバリウチ/ナバアクシャとも;熊本(熊本大レポート,吉岡2,吉岡1990) アクシャバリウチ →アクシャウツ(吉岡2) アクセント →形容詞アクセントの一型化,専門家アクセント,イントネーション アゲル 「やる」;「犬/花に水をアゲル」の類;「ことばの乱れ」としてよく非難される;新資p.142〜,248,426,新日 p.25,26,281,282;→〜テアゲル アコンナル 元はアコーナル;香川青年層(講座);→ウツクシンナル アシケンケン 「片足跳び」;群馬県六合村(篠木/中条1991) アタシ 「(きのう)あたり」;千葉県市原市(藤原1979) アダマサクル 「頭に来る」;新乱p.313 →腹ガ立ツ アタラシャー 「新しい」;熊本の若者(吉岡4) アチャメ →アッチャメ アツイデシタ 伊豆半島散在(永瀬1990a);新資214〜,250,441 アッキ 「歩け」;沖縄口のアッケーの強い命令口調,昭和になってから使った(儀間1987:169) アッタカイ 「あたたかい」;北海道旭川で新方言扱い(小野1988,1992) アッタケ 「あたたかい」;函館(川内谷1990:21) アッチャメ 「斜視」;北海道西部/北部の若い世代に急速に広がっている新方言;アチャメとも;語源は多分「あちら(を向く)目」;もとは,ダメ,ロンパリなど各地で様々に呼ばれていた;北海道日本海岸/札幌(小野1983,1992,1993);新日p.3,57,88,112,162; アッペ 「あるだろう」;最上p.178/新乱p.294;→ミッペ,→アルダロウ アテル 「(パーマを)かける」;京阪神では老若とも;西日本一帯で年輩の人(高橋他1996,Q) アマシ 東京都(国広他1984)→ヤッパシ アマンダレ 「雨垂れ」;元はアマオチ;群馬県(上野1988) アメガ フルヒハ サムイ もともとの日本語では「雨の降る日は」のように,ノ格で表現していた;新資p.208〜,250,440;→格表示 アメシロ 「アメリカシロヒトリ」の略語;実物が猛威をふるわなくなったら,忘れられた;地平p.83,東神p.59/新乱p.314/新日p.21 アメリカシロヒトリ 新乱p.314;→アメシロ アヤワリー 「体裁が悪い」;北海道(石垣1983) 〜アラニ 「〜ではないか」;高校生の新沖縄口(儀間1987) アルカナ 「歩かなければ」;近畿九州少年層(室山1977) アルカナンダラ 「歩かなければ」;近畿四国の少年層(室山1977) アルカント 「歩かなければ」;瀬戸内沿岸少年層(室山1977) アルカンニャ 「歩かなければ」;中国地方少年層(室山1977) アルジャン →ジャン 新日p.291 新資p.152〜,239 アルジャンカ →ジャン 新資p.154〜,239 アルダロウ →アッペ 最上p.178,新乱p.294;→アッペ,アンダベー アルダラ →ダラ新資p.160〜,239 アルヤン →ヤン 新日p.288 新資p.156〜,239 アルヤンカ 大阪府若年層(泉南市1994);新資p.158〜,239;→ヤン 〜アン 「の」;「読むのだ」などの「の」を,新潟県ではガンといい,山形県庄内地方ではナといっていた;最近若い世代が両地ともアンというようになった;もともとのヨムナダを「読むアンダ」のようにいう(大橋1988);鶴岡の高校生に,以前のナダから(貸ス)アンダが普及中(地平p.127,井上1991、1994); アンダカラ 「あるのだから」;埼玉の若い世代で増加(埼玉);→クンダロー 〜アンダバ 「ならば」;山形県庄内地方の若い世代でスルアンダバのようにいう(井上1994);→アンバ,ナーバ アンダベー 「あるだろう」;新乱p.294 →アルダロウ アンチ 「とても」;アンシの変化した形;沖縄中部(野原1994) 〜アンニー 「〜なんじゃないの」;方言のアラニーの変化;沖縄中部(野原1994) 〜アンネー 「のでないか」;鶴岡の元の方言では〜ナデネー(口頭報告) 〜アンバ 「ならば」;山形県鶴岡市付近の若い世代でスルアンバのようにいう(井上1994);→アンダバ,ナーバ アンマ 「あまり」;アンマシとも;ヤッパと平行的な変化;首都圏の若者で耳にする アンマシ 東京都(国広他1984);→ ヤッパシ イ イ(語頭の) →エ(語頭の) 〜イ(スイ) 動詞活用語尾のルの変化;元は「〜ル(スル)」;壱岐勝本浦(講座),対馬つつ村(金田一1977);→トー,フイ/ハルイ イー 「エイ」;八丈島中之郷青壮年層で,老年層の/ee/を/ii/に変えた;/hiirume/(蛾)など(馬瀬1961) 〜イー 「〜おい(形容詞語尾)」;福岡県浮羽町の若い世代;コイー(←コイ=濃い),トイー(←トイ=遠い),オミー(←オミ=重い)など(岡野1988b) イイクナイ 井上1996.3:14 イージ 「よくて」;ジはデにあたる大分弁;大分青少年(講座) イージャン →ジャン 新伝p.85/新資p.46〜,239,295〜/東神p.65/新乱p.315/新日p.21,261,SFp.8,11,58;伊豆半島(永瀬1990a);大分県若年層(1994) イーカラ 「ヨケレバ」;元はヨケレバ;形容詞の無活用化;大分青少年(講座);→イージ イークナイ 「よくない」;沖縄で児童生徒が使う(本永1979) イッショ(ー) 「良いでしょう」 イイダロウ 新資p.64,162〜/新乱p.294;→イイベ イイッショ(ー) 「良いでしょう」「行ったでしょう」などの「で」を落とした言い方;北海道で生まれた言い方で若い女性に多い;北海道人は全国で通じると思っている;北海道の若者(石垣1983);ラーメンに「うまいっしょ」がある;九州の「うまかっちゃん」に対応する商品名;→イッショ,行ッタ(ッ)ショ(ー) イイナル 「よくなる」;大分の青少年の新方言(講座);イカッタ(よかった),イカリソーニ(よさそうに)とも言う;老人のヨーナルにくらべ,すべてイで始まるという規則性が見られる;「よくない」をイーネーとも(元はヨーネー/ユーネー)(高田1970:101f);「よい」が江戸時代に「いい」「ええ」に変わって,活用が不規則になったのを,再び揃える方向への変化である;静岡県の若者のエーラ/エーッケ(老人はヨカラズ/ヨカッケ,意味は「いいだろう/よかった」)も再び揃える方向への変化;井上1996.3:14;→無活用化 イイベ 「いいだろう」;東北と関東の大部分でもともとはヨカンベーまたはヨカッペと言っていた;今関東や東北/北海道の各地で若者がイイベに単純化している;終止形にベをつけるだけなので助詞と同じで使いやすい;東北北部では老人も使っているから南下しているわけ;なお中間段階にイカンベ/イカッペ,エカンベ/エカッペがあった;札幌市内男子高生使用率44%,女子10%(道場1993);新資p.64,162〜/新乱p.295/新日p.117,198,199/SFp.8,11;→イイダロウ,→ベー,→イッショ イーベー 井上1996.3:17 イイマスデス マスとデスを重ねる言い方は,アナウンサーもインタビューなどで使うことがあり,ときに「乱れ」として非難される;新資p.216〜,250,442 イイヤン 「いいだろう」;大分県若年層(日高1994) イインジャン 井上1996.3:15 イエテル 「言える」「あてはまる」;「それは言える」というかつての流行語がさらに形を変えたもの;可能表現の進行形は論理的には変だが,関西で「居てる」「(会議が)あってる」というように,存在を示す動詞にも進行形が広がる前兆か;新資p.116〜,245,394/東神p.69 東海p.127;伊豆半島中年以下(永瀬1990a) イカエ〔イ〕 元は行カ;意志形「う」がア段になるのは中世の山陰方言以来;鳥取若(講座) イカッカ 「行こうか」;元はイカズカ;山梨県(吉田1994) イカッタ 「ヨカッタ」;大分青少年(講座);形容詞の無活用化;→イイナル 井上1996.3:14 イガッタ 井上1996.3:14 イカッペ 新日p.198,199;→イイベ,→イイダロウ イカナイデシマッタ 「(昨日は)行かないで終わった」;東北,北関東(高橋他1996);→〜ナイデシマッタ イカナキャダカラ 「行かなければいけないから」;日本語の「なければならない」は,長ったらしい;最近東京付近の子供は,「なきゃ」と縮めた上で,直接ダカラとつなげて,用法も簡略化した;千葉西部でも使っている;伊豆半島わずか(永瀬1990a);新資p.248,425 イカナキャナイ 「行かなければいけない」;八王子の若者がいう(住民報告1995);仙台あたりと同じ言い方 イカメー 「行かないだろう/行くまい」;大分県の若年層で増加;元は「行きめー」が多かった(堀1994)→イカンメー,イキメッカ イカリソーニ 「よさそうに」;大分の青少年の新方言(講座);→イイナル イカンカッタ 「行かなかった」;過去を表すのに,西日本では元は行カザッタ/行カナンダ/行カンジャッタ/行カンヤッタ/行カ(ン)ダッタ/行カラッタなどの言い方があったが,西日本各地の若い人が「ンカッタ」と「ン」のつく形に変えている;共通語の〜ナカッタの影響よりは,動詞の打ち消しで使われる〜ンと,形容詞活用語尾のカッタとの結合と考える方がよい;名古屋付近の若者(国語研1988:59);金沢(北国1995);奈良(昭和初期から)/滋賀/佐渡/広島/石見全域/四国(愛媛/高知/香川)/日向老/鹿児島若/大分中心部/対馬(以上講座);大分では老人のイカンジャッタから中年〜若年層でイカンヤッタ/イカンカッタに変化(日高1994,松田/日高1996);新資p.64,150〜;風景p.119;→ンカッタ イカンベ/イカッペ 新日p.198;→イイベ,→イイダロウ イカンベー 井上1996.3:17 イカンメ 「行かないだろう/行くまい」;老人はイキメ/イクメ;北九州市西部から福岡市を経て大牟田市までの若年層のほぼ100%が,方言として使用(陣内1985,1996) イカンメー 「行かないだろう/行くまい」;大分県の若年層で増加(堀1994);→イカメー,イキメッカ,〜ンメー イカンヤッタ 「行かなかった」;博多で(陣内1996);→イカンカッタ イキナリ 「思いがけず」;「いきなり会っちゃった」のようにいう(東京での観察1993) イキメッカ 「行かないことにしよう/行くまい」;大分県の若年層で増加(堀1994);→イカメー,イカンメー,〜ンメー イキレル 「生きられる」;東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉;〜レル イキン 「行きなさい」;やさしい命令形;静岡県新居町でいうが,昭和初期に愛知県豊橋から流行ったものという(山口1994);→ミリン,〜リン イキンナカッタ 「行かなかった」;八丈島若年層で増加;老年はイキンジャララ,イキンナララが多かった(工藤他1993) イクッキャ 「行くしか」;土井委員長のヤルッキャナイが語法として正しいか話題になった;東京では名詞のあとにしか「ッキャ」をつけなかったという人もいる;東京都(東京都1986);→スルッキャ イクッケ 「行くんだっけ」(確認するとき);「ダ」をはずして更に短くなった;静岡あたりから広がり,首都圏の若い世代も尋ねるときによく使う;書くときには使わないから,俗語/方言として扱われている;東海道沿線の若者に普及(井上1995.4,Q p.221);→〜ッケ,イタッケ イクッポイ 「行くらしい」;動詞に「ッポイ」を直接つける言い方;以前はポイは「水っぽい」「子供っぽい」などのように一部のことばに固定していたのが,「駄目っぽい」「幼稚っぽい」「あるっぽい」など,色々なことばに自由につくようになった;最近東京の若い人は,「風邪を引いたッポイ」「筋が決まってるッポイ」などともいう;品詞としては助動詞に変化したとみてよい;かつて「ようだ」「そうだ」などが助動詞化したと同じプロセスが今また進行中というわけ;新潟付近では中年以上の人も言っていたらしい;今は東日本の若者に点々と使用者が見られる(新資p.182〜,247,413/東神p.85);→〜ッポイ イクデス 「行きます」;九州に多い;「サザエサン」のタラチャンが使うのは,作者が九州出身の反映か;新資p.64,212〜 イクナイ 「良くない」;埼玉はじめ首都圏の若者に広がっている新方言;東京でも若者の30%近くが使う;北関東から広がってきたもの;終止形のイイと発音のそろうイクナイの方が合理的といえる;元はヨクナイ,ヨカナイ;新資p.246,404/東神p.80/風景p.85f,91;SFp.65;→イカッタ 井上1996.3:14 イグネ 井上1996.3:14 イクベー 井上1996.3: 17 行くンジャン 井上1996.3:15 イクンダヘ 「行くんだろう」;茨城県霞ヶ浦付近の若者の新方言;もともとの言い方はイグンダベまたはイグンダッペ;「ベ」や「ぺ」だと強い感じがするから「へ」に変えたんだという(1991年玉造町史調査で口頭報告) イクンベー 「行くだろう」;群馬県中央部で元のイクベーから(佐藤1993a:130、篠木1994)→〜ンベー イケヘン 「行かない」;阪神の若い世代に増えているといわれるが,大阪/兵庫では老人にも使用者がいる(真田1993);→カケヘン,ヘン,ワカレヘン イケン 「いけない」;老人はデケン;熊本市(熊本大レポート) イケン 「行けない,行くことができない」;福岡県の若者に増加;もとはイキキラン;状況可能と能力可能の区別がなくなった;少年層の80%近くが使う;イケレンも出てきた(陣内1993:73,82,1995,1996);→ネレン イコッカ 「行こうか」;→ッカ,ソッカ イ語尾 元の形容詞カ語尾をイ語尾にするときに,共通語にない語形も過剰修正した;ジョーズイ/ラクイなど;九州北部/西部の都市の若年層(陣内1989,1992);→カ語尾,オーチャクイ,キノドクイ,ゲンキイ,ジョーズイ,ジョーブイ,ハデイ,ピンクイ,ヘタイ,ラクイ イコマイカ 元は行カマイカ;尾張で近世以来増加(講座);→マイカ イジ 「大変」;イジデとも;長崎県(熊本大レポート,陣内1996) イタダキマシタ 「ごちそうさま」;岐阜/長野(学生報告);長野/岐阜/静岡とその付近各県,山口,九州各県(高橋他1996) イタッケ 「いたものだ」(回想);静岡側から愛知少年層に普及(江端1990);→イクッケ,〜ッケ イッカ 「いいか」;長音の促音化;他の形容詞では起こらない;→ッカ,ソッカ イッキ 「すぐに」;鹿児島の若い男,一気飲みのはやる前に生まれている(木部1995) 一型化 →形容詞アクセントの一型化 イッショ 「いいだろう,いいでしょう」;イイッショが縮まったもの;イイショとも;北海道で増加(小野1988,1992);札幌市内女子高生使用率48%,男子7%(道場1993);→イーベ,ッショ イッタ(ッ)ショ(ー) 「行ったでしょう」の「で」を落とした言い方;→イッショ,イイッショ イッチョマエ 「一人前」;北海道都市部で増加(小野1988) イッチッタ 「行ってしまった」;SFp.19 →チッタ イトーナル 「痛くなる」;元はイトーニナル;大阪(講座);→ウ音便 〜イナイ 「くない」;高知の幼児はアカイナイ/シロイナイが多い(土居1986) イボガエル 「ひきがえる」;愛媛/高知の若年層(高橋1986a);泉南市1994;新潟大1994;新資p.90〜,243,379 イマイチ 新資p.248,422/東神p.95 入口ナハズダ 「〜のはずだ」;新資p.200〜,249,436 イルカッタ 「必要だった」;兵庫県;→カッタ 射レル 「射ることができる」;東京都(国広他1984)。→ラ抜き言葉,〜レル 居レル 「居ることができる」;東京都(国広他1984)。→ラ抜き言葉,〜レル イワント 新日p.46;→言ワナイデ インジャン(デ)ホイ 「じゃんけんぽん」;大阪付近の若い世代が使うが,周辺の老人にも使用者がいる;デを加えるのは関西圏;関東の人とやるとタイミングが狂う;Q p.68;→ジャイケン〜 イントネーション →尻上がりイントネーション,疑似疑問イントネーション,昇降調,とびはねイントネーション ウ ウ音便 中部地方各地で,昔の方言分布にくらべると形容詞ウ音便が進出する傾向にあった(江端1987);→《形容詞》アイタナイ,アカカッテ,アカナル,アコンナル,イイナル,イトーナル,タカナイ,ナガーニナル,ハヤナル,ハヨナル;《動詞》オータ,コータ(鎌田1981) ウケラス 元は受ケサス;淡路島/香川(講座) ウザイ 「気持ちが悪い/不快だ」;次項ウザッタイの短音化;1983年の氷川の調査で,中学生の見せてくれた氷川の方言集にウザイが載っていたと,学生が報告したので,「東京外語大で広げよう」とふざけたが,実行はできなかった;その後ウザイを使うという口頭の報告はあった;1980年代後半中野区の男子高校生の間ではウザッタイよりウザイが多かったという;ウゼーとも;雑誌の記事見出しに「"ウザい"ヤツにはふっかける 女子中高生たちの肉体資本主義」の用例が出た(SPA!1994年6月1日号);俗語として扱われている;東京都内某男子校では,大多数が使い,ウザッタイは影が薄い(鑓水1994);関西の学生も使う(高山1995);井上1996.3:8 ウザッタイ 「気持ちが悪い/不快だ/めんどうくさい/うっとうしい」;東京新方言の典型;もともとは多摩地区付近に限られた方言だったが(東神p.93),不快感を表すのに適切なせいか,東京都区内の若い世代に盛んに使われるようになった;1983年の若い世代では,奥多摩地区の90%がピークで,近郊70%,山の手30%,下町10%と,東へ遠ざかるほど使用率が下がる(新資p.176〜,246,409);ウザッテーともいう;西の山奥の氷川の中学生はウザイと略していたが,同じ言い方が今は都区内でも使われる;ウザッタイは青梅の老人は「濡れた畑に入った感じ」と把握,青梅の若者は「不快だ,いやな(人)」ととらえる;山の手の若者は「面倒だ,わずらわしい」の意味で使う;1985年に若者語扱いで登場,同類の語としてウザイ,ウザッポイ,ウザッコイ,ウザクラシイを指摘(榊原1988);1994年には全国各地に拡大(永瀬1994);漫画雑誌でも使われる;ロックグループ"T-BOLAN"の「じれったい愛」(森友嵐士作詞作曲,一九九二年)で,「じれったい オマエの愛が うざったい程 痛いよ」と歌う(井上1996.6);テレビ番組「キャプテンツバサ」のテーマソングで「ウザッタイネ」(学生報告1995);新伝p.52/新日p.9,28,語楽p.130;永瀬1990a;陣内1992;井上1996.3:8 ウザッタカ 「気持ちが悪い/不快だ」;熊本の一部の高校生が使うとか(1994口頭報告) ウズ 「つむじ」;北海道都市部で増加(小野1992);愛媛・高知の若年層(高橋1986a,高橋1996);大阪府(泉南市1994) ウズマキ 「つむじ」;北海道の日本海岸の若い世代は,頭のてっぺんのつむじを「渦巻」という;マキメ/ギリギリなどの先祖が持ってきたことばを捨てて,単純化した総称的表現を使っているわけだ;北海道札幌で増加(小野1992);群馬県(成徳1987);新潟(新潟大1994);愛知県瀬戸市付近(瀬戸市1990);新日p.3,86,90,110,112 ウセェッ 「ウソォッ」;佐賀市(熊本大レポート) ウチッチ 「私たち」;ワタシタチをワタシッチというのを応用した沼津の若い世代の言い方(学生レポート1994.10) ウチナーヤマトゥグチ 「沖縄大和口,沖縄風共通語」;沖縄県で共通語化の過程でできた沖縄方言の色彩をおびた表現;沖縄口直訳の不完全な共通語化によるものと,直しすぎ(過剰修正)によるものがある(陣内1992,平山1984,小林他1996);(老人が)共通語意識をもって使うのは「地域(地方)共通語」にあたるが,(若者が)全国共通語と使い分けるとしたら「新方言」にあたる(井上1995.2);また真田の「ネオダイアレクト」にあたる;沖縄口直訳の傑作は具志堅用高の「海を歩いていたでしょう」;ボクシングをやってなかったらの問に海で働いていたというつもりで答えた(儀間1987);→カサヲカブル,タバコヲフク,ウレシクスル,クルシクスル,チムイ,ダアル,ハク;→バーテーことば ウチンチ 「自分の家」;埼玉/千葉や神奈川の子供の新方言(見坊1987);埼玉の女子高生の半数が使う(埼玉);語源は「内の内」で,自分をウチというのは,関西的で,一方「家」をウチというのは東日本的である(東海p.142);関西でもいう ウツクシンナル 元はウツクシューナル;香川青年層(講座);→アコンナル ウレシクスル 「うれしがる」;沖縄方言ウッサスンの直訳(平山1984,陣内1992);→クルシクスル ウッタヒトオニ 「鬼ゴッコ」;最上p.175 ウマンゴツ 「大変」;熊本;→マウゴツ(熊本大レポート,陣内1996) 裏返し 新乱p.310 →ウラカ°エッチャ ウラカ°エッチャ 新乱p.310 ウルトラ 「大変」;鶴岡の高校生(1993) エ エ(語頭の) 北海道江差で語頭のイがエに変化;小学生にイ(中舌母音)で発音してみせたところ「百姓のことばだ」と反応;発音の混同が広がるときの話し手の受けとめ方の一例である(石垣1959) 英語ヲハナセル →〜ヲ話セル 新資p.202〜,249,437 〜エ(ー) 「〜おい(形容詞語尾)」;福岡県浮羽町の若い世代;シレ(←シリー=白い),クレー(←クリ=黒い),オモシレ(←オモシリ=面白い)など(岡野1988b);→イー エーヤン 「いいだろう」;大阪府中年以下(泉南市1994) エーヤンカ 「いいだろう」;大阪府中年以下(泉南市1994); 井上1996.3:15 エーラ 「いいだろう」;元はヨカラズ;静岡(講座);→イイナル エーッケ 「よかった」;元はヨカッケ;静岡(講座);→イイナル エーッケラ 「よかったろう」;元はヨカッツラ;静岡(講座) エガネアンバ 「行かないなら」;山形県庄内地方(新日p.253);→〜ナラ エグイ 「すばらしい」;北海道の若者(石垣1983,1990:50);東神p.88 〜エヘン →カケヘン,イケヘン エレー 「とても」;佐藤1993a:106 オ オイ 「おれ」;山形県庄内地方の若い世代;oreのrの脱落のあとエがイに統合されてオイになった(井上1994);山形県三川町の中学男子の60%近くが使用(小林他1996) オイー 「多い」;神奈川県の若い人の間に広がりつつある;隣接の静岡県東部で老人も言うのが,伝わったのか;西日本で昔からいう;語尾を長くして,安定させたのか;トーイー「遠い」も同様;Qp.33,36; オイシイ 「ラッキーな」;関西の芸人が使っていたのが,若者に広がった(松本1994);西武の広告で知られるようになった; オーイー 「多い」;神奈川県の若い人の間に広がりつつある;隣接の静岡県東部で老人も言うのが,伝わったのか;西日本の各地では昔から言っていたようだ;語尾を長くして,安定させたのか;トーイー「遠い」も同様;北九州市/下関市の若年層(岡野1992b);Q p.33 大きい 新乱p.310 →デッカイ オータ 「会った」;兵庫県北部では中世以来アータだったが,豊岡市では大阪的なオータが広がっている(鎌田1981);→ウ音便,コータ オオキナ声 新資p.249,434 横着イ →元気イ,イ語尾 オカシイ 「はずかしい,きまりが悪い」;元はヲーサ;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987) オキラッシャル 元は起キサッシャル;出雲(講座) オキラン 「起きない」;大阪徳島間では洲本市の10代一人だけオキラン;オキランカッタは3人;阪神/淡路島の大部分はオキヘン(友定1994);5段化の先駆けともとらえうる;→5段化 オキレ 「起きろ」;岐阜長野県境(永瀬1990b) オキレヘン 「起きることができない」;京阪神の20代以下が使用(老人はオキラレヘン);Q p.124f オキレル 「起きることができる」;岐阜〜神奈川間では老若とも;京阪神は中年以下,滋賀県では20代以下が使用(老人はオキラレル);Q p.123;風景p.91;東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル オキロー 「起きよう」;元は起キョオ,起キュウ;兵庫養父郡(講座) オキンナキャ(ナンナイ) 「起きなければならない」;北海道旭川(小野1992) オ紅茶 井上1996.3:24 オコーヒー 井上1996.3:24 オコライル 「おこられる」;佐藤1993a:217 押しピン 井上1996.3:1 オシャー 「遅い」;熊本市付近の若い男に多い(吉岡4、吉岡1992、1993),新語が好きで方言に誇りを持つ人に多い(小林他1996);→キタニャー オ受験 井上1996.3:24 オジン 「年寄りくさい男」;吉本興業の西川きよしが「プロポーズ大作戦」で広めた;オバンはもとからあった(松本1992,1994);1981年に関西語からCMで広がった(榊原1988) オジンクサ(イ) 「年寄りくさい」;吉本興業の西川きよしが「プロポーズ大作戦」で広めた(松本1992) オソース 井上1996.3:24 オチゴサン 「かたぐるま」;糸魚川近郊に伝播 (柴田1988) オッカナイ 「恐ろしい」;中学生では主に東日本で50%以上の使用率(井上1995.1) オッキ(ー) 「大きい」;大阪徳島間でオオキイ/オッキョイに代わってオッキ(ー)が普及中(友定1994);オッキーは東京でも話しことばでは使うが文章などでは使われない;SFp.50 Q p.79 オッケ 「居るか」;金沢の若者が元のオルケを変えて(北国1995) オッチョコメ 「斜視」;最上p.175 オッチョル 「居る」;大分新作方言(高田1970) オデコ 「額」;北海道都市部で増加,場面差あり,方言としてとらえられている(小野1992);愛知県でも急増(愛知県1989,瀬戸市1990);ただし東京でもふだんのことばとして使っている;→デコ 鬼ごっこ →シメオニ,タッチオニ,ウッタヒトオニ,ヒメクラオニ,シメゲシ,ツカミオニ,ツカミッコ オ入学 井上1996.3:24 オバン 「年寄りくさい女」;オバンということばはもとからあった(松本1994);とすると新方言ではないことになるが‥‥; オバンデシタ 「今晩は」;元はオバンデス;北海道(石垣1983) オブル 「おぶう,背負う」;北海道奥尻島の若年層(ただし「地方共通語」扱いされている可能性もある);老年層はオンブルなど(小野1980) オミャー 「おまえ」;名古屋付近の若者がふざけていうとき;老人はオメァーまたはオマイ;(国語研1988:53) オムレル 「御飯が蒸れる」;昔若者が使い始めたとか;長野県(福沢1982) オモシイ 「面白い」;北海道,山形県,栃木県など各地で,若い世代に広がりつつある新方言(Q p.149);小樽市忍路若年層で増加,老年層はオモシロイ(見野1993a);札幌市内高校生使用率男23%女34%(道場1993);北海道(小野1988,1992);新日p.162;→オモロイ;→面白イ オモシェァッケ 新乱p.298;→オモシロカッタ オモシクナイ 「面白くない」;北海道(小野1988);札幌市内高校生使用率男女とも55%程度(道場1993) オモシグネ 山形県鶴岡市の若い世代が「面白くない」をいう;老人はオモシェグネさらに古くはオモショグネ(井上1994) オモシェケ 山形県庄内地方で,「面白かった」を;老人はモシェガッタ(新乱p.298);さらにオモシイも発生した オモシクナイ 「面白くない」;北海道(小野1992) オモシャイッケ 新乱p.298;→オモシロカッタ オモシレンベー →〜ンベー;佐藤1993a:130 面白かった 新乱p.279〜 →オモッシャッケ,オモッシェッケ,オモシャガッタ,オモシェァッケ オモセグネ 山形県鶴岡市で一時「面白くない」をいったが,その後減った(井上1994);中興方言;→オモシェグネ オモッシャガッタ 新乱p.298;→オモシロカッタ オモッシャッケ/オモッシェッケ 新乱p.297;→オモシロカッタ オモドシ 「おつり」;三重県各地(山田他1992) オモロイ 「面白い」;オモロイは近代の関西地方で生まれたことばだが,最近は東京でも耳にする;大学生では近畿一帯で使用(永瀬1995);大阪府でも若年層で拡大中(泉南市1994);札幌市内高校生使用率男19%,女9%(道場1993);Q p.149;→オモシイ,→オモロカッタ オモロカッタ 「面白かった」;東海道沿線の若者に散発的に使用者出現(井上1995.4);→オモロイ おやたらづけ 井上1996.3:24 オヤフコー 「(爪の根元の)さかむけ」;元はササクレ/ツマザシ;北海道函館(川内谷1990:2) オヨガイネ 「泳げない(状況可能)」;山形県庄内の若い世代で;語源はオヨガレナイ;レのr脱落の形で,以前はオヨガエネと発音されていたが,連母音でアエがアイに変化してできた(井上1994);→デライネ オランクナッタ 「居なくなった」;福岡県の若者に増加;元はオランゴトナッタ;(陣内1993:74,93,1996);→クナッタ オ'レ(頭高アクセント) 「俺」;千葉埼玉の一部で聞かれる;関西アクセントの親の影響か? 俺のだ 新乱p.304 →(俺)ンダ,(俺)ンナダ 居レル 東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル オンナシダ 東神p.84 カ 〜ガ 「〜こそ,をば」;沖縄県の新方言で「ドゥ=強調のぞ」の代用として;「ビールは飲まないが酒が飲む」「私がが行く」(永田1991) 〜ガ 「〜よ(終助詞)」;鹿児島市の若者;「ダメダガネ」「イクガ」(行こうよ)のように使う(木部1995) カイ 「回」;大学の学年の西日本風の呼び方「回生」の略;十数年前「ラブアタック」出演の関西の学生が略し始めていた(松本1994);柴田武によると「回生」は京大系の大学に広がった言い方;→カイメ 回生 井上1996.3:4 カイタラ 「書いた」;元はカカラ;八丈島(大島1977) カイタラ 「書けば」;京都北部でカキャーからカイタラに変化中(加藤1988);→タラ カイチャウ 「書いてしまう」;東海p.118 カイッタ 「書いている(進行態)」;元はカイッダ;促音のあとの濁音(有声音)を避けた発音;最上p.178 書いている →カイッタ 最上p.178 〜カイナ 「だろうか」;関西弁の影響で博多で使いはじめる(小林他1996) カイメ 「回目」;大学の学年の呼び方;1970年代に北海道大学で使っていた;東京では留年したときに「三回目の二年生」のようにいう;→カイ 外来語アクセント 井上1996.3:20 外来語音 井上1996.3:22 カカル 「指名される,あたる」;新潟/山形(高橋他1996);→カケル ガ行音 [g] ← [ng] 佐渡(講座);ガ行鼻音の衰退については,井上1989参照;→鼻濁音 ガ行鼻濁音 井上1996.3:21 カカヘンカッタ 「書かなかった」;関西各地(加藤1991);京都市の若者の大部分がいう(真田1988);京都北部の若年層に普及中(加藤1988);→カケヘンカッタ カカナンダ ←書カザッタ/書カダッタ 鳥取(講座) カケヘンカッタ 「書かなかった」;関西各地(加藤1991) カケル 「指名する,あてる」;新潟/山形(高橋他1996);→カカル カケレヘンカッタ 「書けなかった」;大阪府で,元はカケナンダ,ヨーカカナンダ(泉南市1994) カカンカッタ 「書かなかった」;関西各地(真田1990);加藤1991;新日p.16 〜ガ来タ (第三者への敬語の不使用);新資p.64,210〜 カキョー 「家(庭)教(師)」;→カテキョ カキンナイ 「書かない」;元はカキンナカ;八丈島(大島1977) カキンナッキャ 「書かない」;元はカキンナカ;八丈島(大島1977) カクショク 「学(生)食(堂)」;1970年前後ドリフターズのヒット曲で使用;ガッキーとも(地平p.40) カクッテーヤ 「書くそうだ」;元はカクテーヤ;八丈島(大島1977) カクニ 「書くのに」;元はカコニ;八丈島(大島1977) 格表示 主格/目的格/所有格などの助詞の現れ方;昔は主格/目的格が無助詞であることも多かった;またノは多くの格を表示した;今は主格=ガ,目的格=ヲ,所有格=ノに整理されつつある;一部は方言で先行している;→(水)を欲しい,(英語)を話せる,(百恵ちゃん)を好きだ,(雨)が降る日は寒い,(別)な話し,(入口)ナはずだ カクンノーワ 「書くだろう」;元はカクノーワ;八丈島(大島1977) カケーヘン 「書けない」;カケヘンが「書かない」「書けない」で同音衝突を起こすのを避けるために生まれた;京都北部(加藤1991) カケヘン 「書かない」;阪神の若い世代に増えている新方言;京都などでは「書けない」をカケヘンというから,関西弁同士でも誤解がおこる;阪神では「書けない」をカカレヘンといって区別する(風景,Qp.111);→イケヘン,ヘン,ワカレヘン カケヘンカッタ 「書かなかった」;大阪付近の中年以下で増加;老人はカカナンダ(Q p.129f);大阪市の青年層の70%が使用;兵庫北部の若年層に普及中(加藤1988);→カカヘンカッタ カケレル 「書ける」;静岡県中部(金田一1977);新日p.118 →ラ抜き言葉 〜レル,ヨメレル カ語尾 元はイ語尾;宮崎若年層・熊本東部(講座);→イ語尾 カサオカブル 「傘をさす」;沖縄方言のカサカンブンの直訳(平山1984,陣内1992);→ウチナーヤマトゥグチ カザグルマ 「肩車」;北海道都市部で少し使われる(小野1988);北海道海岸部の若年層に使われる(新日p.3,38,114,162);「風車」との類音牽引による名称の混同か 火事チャウ 「火事ではない」;新資p.63,96〜/風景p.142;Q p.211;→チャウ 火事ヤ →ヤ 新資p.64,164〜 カセル 「貸す」;長野市郊外農村の中学生で増加;カスから変化(馬瀬1963、1971);共通語形から方言形に変化したまれな例;なお『日本言語地図』70図によるとカセルは西中部一帯に分布していた;新日p.46 かたあしとび 新資p.110〜,242,360;東京都(東京都1986);→ケンケン カタカケ 「肩車」;新乱p.276 カタコンマ 「肩車」;老人のクビコンマと共通語形カタグルマの混交;福島県小高町の中若年層で出現(加藤1995) カタス 「片付ける」;関東に広く分布し,東京下町でも使う;新資p.112〜,244,385/東神p.53 肩車 →チングルマイ,チンコロマイ,チンチコモリ,チャンチャコ,チャンチャンコ,カタカケ;新乱p.276 カチャバグ 「ひっかく」;山形県庄内地方;新日p.252 ガチャメ 「斜視」;北海道札幌/旭川で増加(小野1988,1992);東京都(山敷1982);最上p.175/新日p.90;→ア(ッ)チャメ,斜視 カッカラーツ 「肩車」;新潟県糸魚川付近の若年層でカッカラガツの変種として(国語研1985:140,徳川1993) カッカリドンチャン 「肩車」;新潟県糸魚川付近の若年層(国語研1985:140,徳川1993) カックイイ 「かっこいい」;那覇で(まぶい組1990) カッコーワリカッタ 「恥ずかしかった」;元はショースカッタ;福島県北部(国語研1974:112) ガッサイ 「貧弱」;北海道の若者(石垣1983);方言ラップDA BE SA(1995)に「がっさい国産」の用例;→ガッチャイ 〜カッタ 「た」;形容詞活用語尾が,独立して動詞にも付く傾向;タカイカッタ,エエカッタ;さらに昭和後期要ルカッテンワ,違ウカッテモなども出現;兵庫県(和田他1992);→無活用化 カッター 新資p.28〜,242,370 カッターシャツ 井上1996.3:1,12 〜ガッタラ 「(安い)なら」;山形県;新乱p.296 カッタルイ カッタルイは,関東方言では,仕事のあと「疲れた」の意味で使うが,若者は仕事にかかる前に「乗り気でない」意味で使う(地平p.167);なお会社で「あの仕事はあいつにはカッタルイ」などのようにも使う;山敷1982;新伝p.84/新資p.38〜,240,321〜/東神p.67 (東条1938によれば「大儀」の意味でカッタルイを使うのは神奈川/埼玉だった;)→タルイ ガ(ッ)チャ 「よ」(準体助詞);高知(上野1992);→チャ,ッチャ ガッチャイ 「貧弱」;北海道の若者(石垣1983);→ガッサイ カッチャク 「ひっかく」;北海道(小野1988) カッチャリ 「自転車で飛ばす」;石川県小松市の中高生(学生レポート1994.10) ガッチョ 「左利き」;ギッチョから派生;広島県北部(町1987) ガッチョネービー 「かっこつけている人」;沖縄本島中部の小学生がよく使う(野原1993) カッチン 「あめんぼう」;群馬県大間々(上野1988) ガッツスル 「くすねる」;富山県上市の若者(横田1989) 〜カッテ 「くて(過去)」;→赤カッテ 〜ガッテ 「よ」(準体助詞);高知(上野1992) カットバン 「救急絆創膏,バンドエイド」;東北,中部,中四国/九州(高橋他1996);→サビオ,リバテープ カッパダレ 「川水などに落ちて濡れること」;山形県最上地方で;ケァッパダリに代わって進出(地平p.83);「河童」の民間語源による;最上p.176/新日p.209,211 カッパトッタ 新日p.57 →カッパダレ カッパトリシタ 新日p.57 →カッパダレ カテキ 「家庭教師」の略;東京で カテキョ 「家庭教師」の略;東京でいうが大学差がある(地平p.32) カテキョー 「家庭教師」の略(新潟大レポート1992);東京でもいう;北海道大学では,1970年代からカキョウといっていたが,内地には広がらなかったようだ;→カキョー 〜ガデキル 「〜れる(可能)」;カッガデキル(書ける),シガデケン(=為ガデキン=できない)等,鹿児島で戦後出た言い方(南日本1984);サ行変格活用動詞の可能表現が一般動詞の連用形(名詞形)にまで広がった現象;→〜ワ(ガ)デクッ 可能動詞 渋谷1993;→ラ抜き言葉,ミレル,〜レル ガバ/ガバイ 「大変」;佐賀県鳥栖市,福岡県久留米市(熊本大レポート,陣内1996) カバイ 「かおりがいい」;元のカバサから;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→ヒグルイ ガブル →カサオカブル 〜ガフル日ハ寒イ (助詞;副文のなかでノに変換するという日本語本来の規則が働くか否かの違い);新資p.208〜,250,440 カマウ 「からかう」;最上p.180 新日p.208 カマカス 「かきまぜる」;小樽市若年層で増加;もとはカマス(見野1993b) カマギッチョ 「かまきり」;埼玉県東部で戦前には「かまきり」を老人がトカケと呼んでいたが少年層がカマギッチョに変えた時期があった(長谷川1967);老人は「とかげ」をカマギッチョと言っていたから,「とかげ」と「かまきり」の区別を保ちつつ,完全な共通語形を採用しなかったわけ カマキリメ 「かまきり」;共通語形に方言の接辞をつけたもの;八丈島(国語研1985:238) カマチャリ 井上1996.3:5 カム 「からかう」;カマウから変化;最上p.180 からかう →カマウ,カム 最上p.180 〜カラニー 「〜のに」;「行ったカラニー」のように,奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987) 借リレル 東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル カル 「軽い」;山形県酒田付近では形容詞活用語尾を脱落させる傾向がある;以前は「軽コイ」をカルコと言っていたが,半分共通語化してカルイからカルを作った(井上1994);→メッコ かわいい →メンコイ,メッコイ かわいそうだ →チムイ,モドヘ,ムドヘ 最上 p.181. 変ワッチッタ 井上1996.3:10 カワヒキ 「皮むき器」;ダイエー販売三条市製造の商品に(1995);cf.クサヒキ 〜ガン 「〜のか」;「どうするガン」のように,金沢で若い世代がガの代わりに使う(北国1995、小林他1996);→〜ゲン カンネ 「食えない」;新乱p.289 →食ワレナイ ガンバコ 「地面に田の字を描いて一人ずつ升目に入り,ボールを受け渡す遊び」;西日本からはやりはじめた遊びで,東京のなかでも,「大高中小」「天下取り」など様々な呼び方が出ている;西日本ではドッピン,テニス,ピンポンなど多様に呼ぶ;風景p.74,130;井上1996.3:7 ガンバリマッシ 「頑張りなさい」;金沢で昭和30年代前半に使われ始めていた;元々は「ガンバルマッシ」だった;五段活用動詞からマッシへの接続が共通語の影響で連用形に変わったもの(北国1995) カンペン 「金属製の筆入れ」;東海p.111 キ 〜キ 「から」;高知県で周辺部の若者に普及中,高知市への通学者/通勤者が先に受け入れている;元はケン/ケ(高橋1986b,高橋1996,小林他1996) キー 「来い」;大阪徳島間でコイ/キテなどに代わってキーが普及,徳島県では今は大多数(友定1994) 〜キー 「から」;高知市付近の若者,元はキニ(土居1986) ギーコンバイコン 「おおばこ」;長野市付近の子ども,元はオンバコ;ただし大人になっても使うかは疑問(馬瀬1963);→ズイコンバイコン キイシャナイ 「汚い」;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→キョライ,キタネサ キイチョネー 「聞いてない」;「キイチョラン+聞いてない」の混交,大分県の若者(日高1994) 黄色いおばさん 「交通専従員」;横浜/高知/広島(柴田1988) 黄色いママさん 「交通専従員」;大阪(柴田1988) 効かない/引かない →キガネ,ヒガネ 最上p.179 キガネ 「効かない」;東北方言でのカ/タ子音有声化の音韻環境による例外としてキカネが保たれたが,文法的類推によって連用形キキ終止形キグと語幹が整えられた例;今は東北地方各地に広がった;地平p.83,最上p.179/新乱p.287/新日p.162,217 キキラン 「着ることができない」;九州の言い方が下関市の若年層に普及(岡野1992a,小林他1996);→キリキラン/キリキル 聞キヨ/見リヨ 元はオ聞キヨなど;大分県中心部若女(講座) キコワス 「聞こえさせる」;佐藤1993a:175 キサセル 「来させる」;新資p.140,249,433 キサナシカ 「汚い」;古くはヨッソワシカ;長崎県(熊本大レポート) 疑似疑問イントネーション 1992年頃ギョーカイで使われるようになり,1994年には若い女性(コギャル)などにも流行しているイントネーション;「半クエスチョン」とも(井原1994);文節の中の単語の末尾(の音節)に疑問文と同じような上昇イントネーションを使い,ポーズをおいたあと文章を続ける;その単語が強く発音される;「きのう新宿のハルク↑にいってね」など;言いながら相手の目を見ることが特徴;相手もうなずいたり(慣れないうちは)相づちをうったりする;フォリナートークとして,相手に意味/意図が伝わっているかを確認するために,以前から使われていたし,多くの言語に普遍的な用法;ただし,明らかに若い世代での使用が増えた;相手の注意を引くための用法に転じたためか;駒場国際高校で1992年ころ使っていた(卒業生の報告);知識の確認/聞いているかチェック,あいづちを求めるなどの効果がある;先生に使うことも多かったとか; 井上1996.3:23 キシャバ 「駅」;ステンショに代わって一時香川県で使用;かつての新方言か(中井1993) キショイ 「気持ちが悪い」;「キショクワルイ」の略;十数年前に大阪の中高生などに使われていた;数年前タレントのトミーズ雅(30代半ば)がテレビ番組で使用(松本1994) 来タ (第三者への敬語不使用);新資p.64,210〜 来たい →キッテァ(最上p.179) →キッチャイ (新乱p.292) 着たい →キッタイ(最上p.178) キタニャー 「汚い/ずるい」;熊本県の若者に普及中,熊本市内では老人も使う(吉岡1993,熊本大レポート);→オシャー キタネサ 「汚い」;昔はヤナグサといった;奄美(恵原1987);→キイシャナイ 気づかない方言 地元の人が方言と気づかないで公的場面でも使う非標準語形;学校や社会生活に関わる語が多い;その一部は近代以降の発生で,当時は新方言の定義があてはまったと思われる;関西の「モータープール」,東海の「ビーシ」「放課」など(Q);もう一つの意味の気づかない方言は,よそ(東京など)に行って使ってしまう方言で,私的場面で使われるものや,形が共通語と同じために用法の違いに気づかないものが多い(沖1992);小説などにも表れることが多い;例:コワイ,ナオス,エライ,(ごはんを)ツグ;この現象の認定には世代差は無意味である;→新方言,地方共通語 キッタイ 「着たい」;最上p.178 キッチャイ 「来たい」;新乱p.292 キッテ 「来たい」;新日p.45 キッテァ 「来たい」;最上p.179 キノドキイ 「気の毒だ」←「恥ずかしい」;意味が共通語的に変化した例;大分県(日高1994) 気ノ毒イ →元気イ,イ語尾 キノンバン 「昨夜」←「一昨夜」;意味が共通語的に変化した例;大分県(日高1994) 〜キャ 「〜ならば」;山形県最上地方;最上p.119,172/新日p.217 〜キャ 「〜ければ」;→〜ナキャ キャーイイ 「気持ちがいい」;キャーワルイから逆成;富山県(横田1989) 〜キャア 「かい(疑問)」;1980年頃には群馬県全域の高校生が使っていたが,1990年頃には使用者が減った;つまり「中興方言」になった(佐藤1993a:210,1993b,1994) 〜キャダカラ →イカナキャダカラ キャピキャピ (対照のために調査した新語)新伝p.85 ギャン 「大変」;福岡県南部,熊本市の高校生以下(熊本大レポート) キョライ 「美しい」;元のキョラサから;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→キイシャナイ キラスッ 元は「来サスッ」;鹿児島県少年層の一部(講座) キラネー 「着ない」;渡島半島南部の生徒(舟越1970);→ラ行五段化 きられない 新乱p.290 →キランニ,キリキラン きられる 新乱p.290 →キルイ,キレル キラン 「着ない」→キル キランシタ 「切りなさる」;滋賀県北部の中学生が最近採用(下野1995);→ンス キランニ 「着られない」;福島県で,老人のキランニェの発音の簡略化として;新乱p.290/新日p.20 SFp.27 キリキラン/キリキル 「着られない/着られる」;キキラン/キキルとも;北九州市小倉(熊本大レポート) キリキレル 「着ることができる(能力可能)」;沖縄県の新方言で(永田1991) キリマス 「着ます」;渡島半島南部の生徒(舟越1970);→ラ行五段化 〜キル/[〜キラン] 能力可能;山口県下関市,日本海岸の中年以下;女性が早く採用(岡野1985b、1988);元は飲ミユル/エ飲ム/〜ガナル[飲ミエン][エ飲マン] [ 〜ガナラン];肥前;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987) キルイ 「着られる」;山形県で元のキルニイイから;新乱p.290 キレイカー 「きれいだなー」(詠嘆);福岡県(岡野1987) キレ(ー)カッタ 「きれいだった」;ただし四国全体の大学生でキレーナカッタが有力(高橋他1996)→キレカッタ (きれい)なら 新乱p.296;→ダゴンパ,ダゴッパ,ゲ(ン)バ キレークナッタ 「きれいになった」;→元気イ キレーナカッタ 「きれいだった」;元はキレーニアッタ;山口県(岡野1981) キレカッタ 「きれいだった」;九州の若者の一部に使用者が広がっている新方言;関西弁で早くから使っていたし,四国東部でも使っていた(高橋1996);今も大阪神戸付近で盛んに使う;本来は漢語の「綺麗」に基づき,キレイジャッタ,キレイヤナイのように形容動詞として使っていたが,「きれい」が「い」で終わるものだから,「暗い」などと同じく,形容詞の活用をとることになった;形容詞の活力を示す例;新資p.64,186〜/新日p.256;沖縄でも児童生徒が使う;他にジョートクナル/ナンギクナイ/イイクナイ/チガウカッタ/チガカッタなど(本永1979);京阪神/徳島/西九州では老人も使用,全国各地で若い人の一部使用(高橋他1996);→キレ(ー)カッタ キレク 「きれいに」;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987) キレクアル 「きれいだ」;沖縄県の新方言で(永田1991) キレクアッタ 「きれいだった」;→キレクアル キレクナイ 「きれいでない」;→キレカッタ キレナイ 「着られない」;新日p.18;→ラ抜き言葉,〜レル キレヘン 「着られない(着ることができない)」;京阪神で老人のキラレヘンに代わって進出中;Q p.121f; キレル 「着られる」;房総南端の中学生では約半数が使用,老人はキラレル(昭和1994);新乱p.290/新日p.26,46,168,257,258,275,276,277,279,282;SFp.27;東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル キレレ(ー)ヘン 「着られない(着ることができない)」;淡路島の一部の10代がキラレヘンに代わって採用(友定1994) キンシャッタ 「来られた」;福岡県(岡野1987) 近代方言 井上1996.3:1 ギンダメッコ 「斜視」;北海道岩内地方で;ダメから;メッコは盲目のこと ク クイ 「降る」;対馬つつ村で大人のフルなどルで終わる動詞をイに変えた(金田一1977);→ハルイ クイル (物をもらう意味の)「くれる」;山形県庄内地方の若い世代が,もともとのクエルという言い方をやめて採用した;母音間のエがイと認知されるようになったため(井上1994); クエル (物をもらう意味の)「くれる」;山形県庄内南端の若い世代が,もともとのクレルという言い方をやめて採用(地平p.109);しかしすぐに次のケルが普及した; クーレグネァ 「暗くない」;山形県庄内地方;形容詞無活用化による;形容詞を多音節化する傾向の反映でもある;新日p.252 →暗クナイ くすぐったい →コッチョギ(デァ),コチョギ(デァ),コスギ(デァ)最上p.176,コチョバイ,コチョバシイ,コチョビタイ;新乱p.280/風景p.77;モグッチイ,モチョカユイ,モチョカリ くすぐる 新乱p.280 →コチョガス クセシテ 「〜くせに」;「知ってるクセシテ教えてくれない」のような言い方は,東京付近で高年層44%,青年層81%と増加中;都外から流入したらしい(田中他1994) クツ(靴のアクセント) 広島県付近の若年層で尾高(2)から頭高(1)に変化(馬瀬他1995)→フク クッチ 「くれて」;福島県の方言では,クッチェ,クンニェのように,標準語に本来なかった発音/tje/, /nje/を使っていたが,若い人はチ,ニのように標準語にある発音を使うようになった(講座);新日;→クンニ,キランニ クッチョル 「食っている」;大分県の若者が共通語との混交としていう;元はクウチョル(日高1994) グッデ 「くて」;鶴岡高校生;デデグッデ(出たくて)のようにいう;もとの方言ではデダグデ(口頭報告) クッペ 「来よう」;最上p.178 〜クデ →ヤスクデ クブスン 「こぼす」;40代の人の使う沖縄口で;本来はイイケーラスン(儀間1987) クルシクスル 「苦しがる」;沖縄方言クチサスンの直訳(平山1984,陣内1992);→ウレシクスル クルンベー 「来るだろう」;群馬県で元のクベー,キベーから;(佐藤1993a:130,篠木1994)→〜ンベー くれた →ケッタ 最上p.177 →ケッチャ,ケッダ,ケダ 新乱p.282〜 くれない →ケンネ 最上p.179; →ケンネ,ケンニ新乱p.288 クロニエ 「青あざ」;熊本県緒方町の若い世代;老人はクロジミ(熊本大レポート) グヮーシー 「不良,不良っぽいやつ」;「○○グヮーシー」は本来「○○のふうをしている」の意味で使われたが,沖縄県の中学生の間で独立したことばとして使われる(まぶい組1989);「不良グヮーシー」の上略(野原1993) 食われない(食えない) 新乱p.289 →カンネ,クワンニ クワンニ 「食えない」;新乱p.289 SFp.26 →食ワレナイ クンダモーター 「徒歩」;那覇の一部で;クンダはふくらはぎのこと(まぶい組1990) クンダロー 「来るのだろう」;埼玉の若い世代で増加(埼玉) クンニ 「くれない」;福島県S,Fp.23 →クッチ,ニ,ケンニ ケ 〜ケ 疑問助詞;関西にはカ/ケ/コの3種の疑問助詞がある;滋賀県/兵庫県では,新たにケが,目上へのことばとして広がった(鎌田1981);→オッケ 〜ケ →ッケ,ツエッケ,ナイッケ 〜ケー 順接の助詞「から」;大分県各地の若年層がケンとともに採用,もとはキー;肥筑方言から(松田/日高1996) 〜ケー 「か(質問の終助詞)」;鹿児島市の若者が「ガッコー ヤスミ ケー」のように言う;高年層は「ヤスン ナ/カ/ヤ」(木部1995) 〜ゲ 「〜のだ」;元は「〜ガヤ」;金沢の若者の「ゲン」につながる言い方(北国1995);→ゲン 形容詞アクセントの一型(イッケイ)化 東京語の形容詞アクセントは,本来2種類あったが,1種類に統合されつつある;「暑い」「厚い」の区別のない人が増えつつある;昭和20年代から指摘されている;近畿方言ではやや早く起こっていたか;統合の原因は,@活用形によって起伏型/平板型のアクセント核の位置の移動が複雑であること,A無声化により高いところが単語によっては移動すること(ヒクイ:ヒククナルの例では,ヒが高くなるべきだが無声化のためクに高い部分が移った),B形容詞にデスと接続するようになったが,この場合起伏型/平板型の区別がなくなること,などがあげられる;名詞の平板化,ことに「専門家アクセント」の広がりは意識されているが,こちらは気づかれないうちにじわじわ広がった;→一型化,とびはねイントネーション 形容詞の無活用化 →無活用化 〜ゲー 「(山)へ」;元はヤマエ/ヤメー;八丈島(大島1986) ゲー 「わー」(間投詞);那覇の女子中高生が「ゲー,サイテー」などのように使う(まぶい組1990) ケーヘン 「来ない」;大阪市の青年層に多い(真田1988);老人も使用(泉南市1994);→コーヘン ケール 「くれる」;新日p.139 〜ケーン 熊本;→ケン ケタ 「くれた」;新資p.63,144〜;→ケッタ ケダ 「くれた」;新乱p.283; ケタクリマシーン 「自転車」;→ケッタ;井上1996.3:5 ケチェエン 「消してある」;40代の人の使う沖縄口で;本来はチャーチェエン(儀間1987) ケッタ 「自転車」;愛知県から岐阜県にかけての若者の新方言;愛知県東部ではケッター;他にケッターマシーン,ケタクリマシーンとも;恐らくテクシーのようなふざけた言い方(スラング)のケッターマシーンが起源;この言い方が普及したおかげで「チャリンコ」はこの地方には進出が遅れていた;全国の大学生の調査では東海地方を中心に全国各地に散在,全国で各種の言い方が混在している(永瀬1995);新日p.45,165,248,250;Q p.70; 井上1996.3:5 ケッタ 「くれた」;新庄市から北の山奥へ斜めの等語線を描いて進出中(地平p.76);新日p.216 最上p.177;→ケタ ケッダ 「くれた」;山形県村山/置賜地方に進出中(地平p.76);新乱p.283; ケッター 新日p.288 Q p.70 →ケッタ 井上1996.3:5 ケッターマシーン →ケッタ 井上1996.3:5 ケッタクル 「蹴る」;老人はケタクル;熊本(熊本大レポート) ケッチャ 「くれた」;新乱p.282 ゲットモ 「けれども」;最上p176 ゲッパ 「びり,最下位」;北海道都市部で増加,父母のゲレッパの縮約(小野1988,1992);→ゲレ ケッパル 「頑張る」;北海道都市部で増加(小野1988) ゲッピ 「びり」;(佐藤1993a:198,1993b) ゲッペ 「びり」;山形県最上郡で増加中;福島市/伊達郡にも(新潟大レポート1992);最上p.176 新日p.210f 〜ケド 「〜けれども」;江戸時代以来ケレドを経て並存しつつ進出;新資p.58〜 〜ゲナ 「なんか」;「数学なんか嫌いだ」などのナンカをゲナという;福岡県博多の若い女性に出現(陣内1993:104,119);→ッチ ゲラッパ 「笑い上戸」;山形市の若い世代に今広がりつつある新方言;老人のゲラから変化した;擬声語のゲラゲラから出たのだろう;途中ゲラパンというふざけた言い方も生み出している;新乱p.310 ケル (物をもらう意味の)「くれる」;山形県庄内地方の若い世代が,もともとのクエルという言い方をやめて,東北一般に広がっている言い方を採用した;広域の方言への統合が今も進んでいる例である(新日p.138,地平p.109);1988年の高校生のデータでは,鶴岡酒田ともにそう増えていない;代わりにクイルが増えている(井上1994); ゲビ 「びり」;佐藤1993a:198,1993b ゲレ 「びり,最下位」;北海道都市部で増加,父母のゲレッパの縮約(小野1988,1992);→ゲッパ ゲレッパ 「びり」;北海道 けれども →ゲットモ,ケンド 最上p.176 ケロヨン 「蛙」;元はゲーロ;多分テレビ番組から;群馬県六合村(篠木/中条1991);→ナメヨン 〜ケン 元は「〜ケニ」;香川(講座) 〜ケン 「けれども」;大分県各地の若年層の一部が採用,からのケンと混同の恐れがあるのに(松田/日高1996) 〜ケン 「から」;大分県各地の若年層がケーとともに採用,もとはキー(松田1991,日高1994,松田/日高1996);熊本県南部では,もとデを多く使っていたが,北部と同じ言い方ケンが,増える一方;熊本市では文末助詞としても使用;ケーンと伸ばす(吉岡3、吉岡1992);天草でもデからケンへの年齢変化があざやか(吉岡1990) 限 井上1996.3:4 〜ゲン 「〜のだ」;「するげんてー」「かたづけせんゲンよ」など;元は「〜ガヤ」;金沢の若者(北国1995,小林他1996);→ゲ ケンカ 元は「来ンカ」;鹿児島少年層の一部(講座) 元気イ 「元気だ」;博多方言はじめ九州各地の若者に広がりつつある新方言; 老人は「元気ジャ」 と言っていた;多くの単語で起こっている変化で,元気カッタ,キレークナッタ,ヘタイ,気ノ毒イ,派手イ,丈夫イ,横着イなどの例がある;熊本では変ナイ/雑カ/達者カ/立派カなども出現している;〜ナのつく形容動詞の一群が,意味の似ている形容詞と同じ活用語尾を取りはじめたもの;形容詞の勢力拡大の例;→イ語尾 元気ナカッタ 「元気だった」;宮崎県/徳島県の若い人の新方言;老人は「〜ジャッタ」という;静カナカッタなど,形容動詞のナに,過去を示すカッタをつけたもの;形容詞的な活用になったわけ; 元気ヤッタ 「元気だった」;元はゲンキジャッタ;下関市/北九州市(岡野1991) ケンケン 「片足跳び」;『日本言語地図』によると西日本では昔からケンケンと呼んでいた;今東京はじめ東日本各地の子供に広がりつつある;しかし辞書には取り上げられない;東京のチンチンはじめ全国に多様な言い方があったのが,関西弁に統一されようとしている;テレビの幼児番組(NHK「おかあさんといっしょ」)のかけ声「ケンケンパ」が影響したという考えもあるが,1970年はじめに各地の大学生で広がっていたことから,地伝いの伝播と考えられる;北海道奥尻島の若年層が使う;老年層はテンコマッコ(小野1980);東京都(東京都1986);群馬県では1980年頃の高校生の大部分が使用(佐藤1993a:82,1993b,1994);群馬の大学生の大部分が使うが,そのかなりが「幼児語」と意識(山県1988);千葉南部(川名1980);伊豆半島(成徳1989);伊東市中年層で増加(野元1962);静岡県本川根町の若年層(中條1981);新潟大1994;山梨県北都留郡(成徳1992);甲武相国境(成徳1993);長野市では老人も,郊外農村では中学生の半数(馬瀬1963);愛知県でも急増(愛知県1989);愛媛は老人も使用,高知は若年層に普及中(高橋1986a);福岡県(岡野1987);新資p.32〜,241,354〜/新日p.9,46,262〜265,270〜272,29;東海p.112 井上1996.3:13 ケンタ 「ケンタッキーフライドチキン」の略;東京/大分/新潟県 元大中少 井上1996.3:12 ケンチキ 「ケンタッキーフライドチキン」の略;熊本 ゲンチャリ 原動機付自転車;大阪市(岸江1988);類例にカマチャリ,ママチャリ,マジチャリなど;→チャリンコ 井上1996.3:5 〜ケンド 「けれども」;新日p.217 最上p.176 ケンネ 「くれない」;新しい動詞ケルと従来の動詞否定形のクンネ(<クレネ)の混交として発生(地平p.83);最上p.179/新乱p.288/新日p.162 ケンニ 「くれない」;新乱p.288;→クンニ 〜ゲンパ 「(安い)なら」;新乱p.296 〜ゲ(ン)バ 「(きれい)なら」;新乱p.297 ゲンバク 「地面に田の字を描いて一人ずつ升目に入り,ボールを受け渡す遊び」;→ガンバコ 井上1996.3:7 コ コイッタ 「こんな」;最上p.181 新日p.208; コイバ 元はクレバ;北海道(講座) コイモ 「里芋」;中年以上はサトイモ,近畿中央部のコイモという言い方が若い世代に多いが,地方共通語として普及した可能性もあるという(熊取町1984) コインタ 「こんな」;最上p.181 校時 「授業時間」;東北各県,山梨,中国各県,長崎宮崎鹿児島沖縄で生徒も使用;全国各地で先生が公式の場で使用(高橋他1996); 井上1996.3:4 校長先生ガ 来タ (第三者への敬語);新資p.64,210〜 講目 井上1996.3:4 コータ 「買った」;兵庫県北部では中世以来カータだったが,豊岡市では大阪的なコータが広がっている(鎌田1981);→ウ音便,オータ コーテ 「買って」;名古屋付近,老年層はカッテなのに,少年層でコーテと答える人が増えた(江端1994) コーヒーシャープ 「喫茶店」;沖縄県(柴田1988) コーヘン 「来ない」;西日本ではコンまたはキイヘン(来はしない)がもともとの言い方;阪神でケーヘンともいうが,さらに若い人はコーヘンという;滋賀県では中年以上も使うから,その影響か(井上1995.4,Q p.115);共通語の影響によるネオダイアレクトの典型例とされる;大学生では関西中央部以外に愛知/岐阜でも使用(ロング1994);岡山中年から大阪方面へ拡大(真田1993),関西各地(真田1990:342);洲本の若い世代がケーヘンからコーヘンに置き換え(鎌田1991b);大阪徳島間では神戸市をピークに大阪市から明石市を経て淡路町の若い世代にコーヘンが普及中;この地域大部分はケーヘン,阪神地区のみキーヒンまたはキエヘンだった(友定1994);→シーヒン,ケーヘン コーフニ 「こういう風に」;関東方言から東京に コールー 「独楽コマ」;老人の沖縄口のクールーを,戦前に母音オを使って大和口化した(儀間1987) コガイナ 「こんな」;最上p.181;新日p.208 コクサイショ 「じゃんけんぽん」;大分新作方言(高田1970) 黒板消し 井上1996.3:3 黒板拭き 井上1996.3:3 コシキー 「ずるい」;元はカシケー(高田1970) コスギデァ 「くすぐったい」;最上p.176 コジキケズリ →ドロボーケズリ コショボル 「くすぐる」;大阪府で発生(泉南市1994) コソバス 「くすぐる」;徳島でコソバカスに代わってコソバスが普及中(友定1994);大阪側は全世代がコソバスなので大阪弁の影響と考えられる 〜ゴタ 「〜のように/〜したい」;〜ゴタルから;熊本(熊本大レポート) 五段化 上/下一段活用動詞のラ行五段活用化;九州など各地の若者でいま進行中;ミラン,デローなど;→デラン,デレ,デロー,ミラン,ミレ,ラナ,ラン,ランドッテ,リ,ロ,ロー;真田/宮治1990,真田1992,p.21;沖縄県でも地域共通語的にキラナイ/デラン/ミラン/ミレ/オキレ/デレを使う(本永1979),ミラン/ミレ/ミローを使う(永田1991);渡島半島南部の生徒はミラネー/キラネー/ノビラネー/ニラネー/キリマスなどという(舟越1970);1994年岐阜県高山市の看護婦の一人が使用;→ラ行五段化 ゴチー 「ごつい;すごい」;熊本(吉岡3) コチョガス 「くすぐる」;北海道で増加(新乱p.280);小樽市付近若年層で増加(見野1992) コチョギデァ 「くすぐったい」;最上p.176;新日p.208 コチョグル 「くすぐる」;新潟県上川村の若年層の一部;老人はコチョガスが有力で若年層はクスグル;コチョグルは両者の混交として生まれた(新潟大1994) コチョバイ 「くすぐったい」;北海道札幌で増加(小野1988,1992) コチョバシイ 「くすぐったい」;北海道中央部/北部の若者に広がりつつある言い方;「くすぐる」をコチョバスというのに合わせたもの;モチョコイ,コソバイなどの故郷の言い方は廃れた;新日p.3,92,113;北海道旭川で増加,ただし旭川の父母は共通語扱いしている(小野1988,1992);新潟県糸魚川付近の早川谷ではもともとのクツバシイの変形として若者に普及中だった(国語研1985:117,徳川1993:338) コチョバス 「くすぐる」;北海道札幌旭川の若い世代で増加(新日,小野1988,1992);北海道小平町若年層で増加(見野1992);新潟県糸魚川付近の早川谷ではもともとのクツバスの変形として若者に普及中だった(国語研1985:117,徳川1993:338);高知県愛媛県で十代の一部が使用;多分,有力な形コソバスに擬態語のコチョコチョが働きかけてできたもの(高橋1996) コチョビタイ 「くすぐったい」;新乱p.280 ゴッキー 「ごきぶり」;浜松付近の若い世代;Qp.186 ゴッタラ 新日p.217 最上p.119,172 コッチョギデァ 「くすぐったい」;最上p.176 ゴッツイ 「たいへんに」;淡路島徳島間でゴッツイが普及中(友定1994) ゴッツー 「たいへん」;関西の新しい流行(松本1994) 来なくても →コネクテモ;新乱p.304; コネクテモ 「来なくても」;新乱p.304 コビル 「おやつ,午後の間食」;以前はコズーハン;福島県北部の若年層(飯豊1984) コマツキ 「補助輪付き(自転車)」;近畿一帯と鳥取岡山/香川徳島(小林他1996);→コロツキ,ハマツキ ゴマントある 「たくさんある」;北海道(講座) ゴムダン 「ゴム跳び」;東京と近郊などに進出中;埼玉の女子高生の使用率は約50%;東北地方など各地で昔から言っていたのが逆流したのだろう;確かに段を作るから,ゴムダンのほうが分かりやすい;京阪若年層の一部(近畿1994);風景p.130;東神p.42; 井上1996.3:7 ゴムトビ 東神p.42; 井上1996.3:7 コヤー 「怖い」;熊本(吉岡12) コヤー 「来なさい」;元はイリャー(いらっしゃい);書キャー/見ヤーにならって発生した;愛知県瀬戸付近の若者(瀬戸市1990);丹羽の調査によると名古屋近郊の中学生の90%が使用(朝日1995) コヤシナイ 新資p.138〜,249,432 こよう →クッペ 最上p.177 コラス 「来させる」;元はコサス;高知の若年層(高橋1991) コラレタ 新資p.218〜,250,443 コランナイ 新日p.288 新資p.136〜,248,430 コレッキシ 「これっきり」;千葉県市原市(藤原1979) コレッキャ 「これしか」;佐藤1993a:78,1993b コレッパカシ 「こればかり」;千葉県市原市(藤原1979) コレバ 「来れば」;北海道都市部の若年層の一部,元はコイバ(小野1988,1992);札幌高校生使用率25%前後(道場1993) コレル 「来られる,来ることができる」;房総南端の中学生では約半数が使用,老人はコラレル(昭和1994);新資p.20〜,134〜,249,431;東京都(国広他1984) コレレル 「来られる(可能)」;静岡県中部(金田一1977);→ラ抜き言葉,〜レル,ヨメレル コロ 「こよう」;山形県庄内地方;新日p.253 コロツキ 「補助輪付き(自転車)」;広島(小林他1996);→コマツキ,ハマツキ 転ぶ 新乱p.311 →スッコロブ 壊れた →ブッコワレタ,ボッコワレタ 新乱p.281〜 最上p.177 コンカッタ 元は「コンジャッタ/コザッタ」;大分県中心部(講座) こんな →コインタ,コイッタ,コガイナ 最上p.181 〜ゴンパ/ゴンバ/ゴッパ 「(安い)なら」;新乱p.296 サ 〜サ 「〜へ(格助詞)」;東北地方各地で若い世代が用法を拡大している(小林1995);山形県鶴岡市付近で「見サイグ」のようにいう;サを方向だけでなく目的にも使うように,用法を拡大した(井上1994、佐藤亮1994);ドッカサにおいては,サの接続という文法的機能の変化があったし,ハという音形の変化もあった;→ドッカサ,ハ,ミサ 〜サ 「よ(間投助詞)」;鹿児島の若い世代は,「すごいよサ」のように,ヨのあとにサをつける;純粋の鹿児島弁にはない用法(タウン誌1995?) 〜サー 「よ」;「イヤダサー」など,神奈川県南部の若い女性に一時使われた(日野1959) 〜サーネ 「〜だろう(念を押す表現)」;セーヤーを共通語化して;「〜とするサーネ」など;沖縄県の高校生,成人も(儀間1987) サイチョー/サイトー 「咲いている」;元はサイチョル/サイトル;福岡県(岡野1987) サクットスル/サクサクトスル 「手際よい様子」;首都圏の若者,全国の大学生に散在(高橋他1996) ササライシュー 「さ来週の次の週」;千葉/神戸で(口頭報告) 〜サセル 「〜セル」;「休まさしてください」「勤めさせていただきます」のような言い方が東京に広がっている;関西風の言い方とされる;五段活用動詞への接続が,一段活用動詞と同じ形をとる;敬語的表現に関わるせいか乱れ意識を伴わずに広がりつつある 雑カ →元気イ サッパシ 「さっぱり」;東海p.135;東京都(国広他1984) サビオ 「救急絆創膏,バンドエイド」;北海道,中部各地など(高橋他1996,小林他1996);→リバテープ,カットバン 寒い(けれども) 新乱p.283 →サメ,サメァ サムイッケ 井上1996.3:18 サメー 「寒い」;新乱p.283 サメァー 「寒い」;新乱p.283 サリゲニ 「さりげなく」;→ナニゲニ ザンギ 「鶏カラアゲ」;北海道でここ20年来(武田1995) サンナネ 「しなければならない」;新乱p.289 サンナンネ 「しなければならない」;新乱p.289 サンネ 「しなければならない」;最上p180;→スランネ サンパツヤ 「床屋」;奈良県南部の山間部では老人でトコヤ/サンパツヤが拮抗しているのに,若い世代でサンパツヤという関西風の言い方が圧倒的になった(真田1996) シ シ 「しろ」;語源は「セイ」;山形県庄内地方の若い世代でシェに代わって一時普及;音声的に方言音のシェと共通語音のシが似ていたためにできた語形;その後発音の規則的対応によるセが普及した(井上1994) シー 「しろ」;大分県南部で以前のショに代わって進出(九州1969) シーヒン 「しない」;京都から滋賀県西部にかけて増加中;老人のセーヘンからの変化;(井上1995.4,Q p.116)→シン 〜ジェー 「〜ではないか」;ジャンカの変化形,三浦半島幼少年が使った(日野1952);→ジェン,ジャンカ 〜ジェン 「〜ではないか」;ジャンカの変化形,三浦半島幼少年が使った(日野1952);→ジェー,ジャンカ 塩辛い 東京都(東京都1986) →ショッパイ 〜シケー 「〜から」;兵庫県城崎町に北上(佐伯1990) 時限 井上1996.3:4 ジコウ 自動車学校;富山県(新潟大レポート1992);沖縄では1978年の左側通行変更時に使用していた(琉球新報1992) シシアサッテ 「やのあさって」;「しあさって」の次の日,あさっての次の次の日;首都圏の一部の若者のごく最近の言い方;「し」を二つ重ねてもっとあとの日を指したわけ;土屋私信で気づいた(真田1996に再録);中学生の通信調査によると,西日本各地に使用者がいる(井上未刊); シズカカッタ 「静かだった」;沖縄県の新方言で(永田1991) シズカナカッタ →元気ナカッタ したい →シッテァ 最上p.179 →シッチャイ,スッタイ 新乱p.291〜 シタッケ 「それじゃあ/そうしたら」;北海道や北関東で若い世代に向けて増えている;ッケは「見たっけ,居なかった」など,かなり自由に使う;首都圏では千葉の言い方ととらえられている;北海道の若い人はシタッケを「さよなら」のあいさつにも使う;札幌の「方言みやげ」のキーホールダーやTシャツにも使われるくらい,地元では有名になっている;なお新潟県西部では,「(だ)から」のスケが若い世代でッケに変化し,「酸っぱいッケ」のように言っている;→ッケ シタッペ 「つば」;山形県真室川付近で古いタッペと新しいシタッペが混交して発生した(地平p.79);最上p.175/新日p.162 シチャーヘン 「してはいない」;元の言い方は「シチャーセン」;高知の若者の一部が使う(口頭報告1995);「シテハオラン」がもっと古い言い方か;→ヘン シッチャイ 「したい」;新乱p.292 ジツテ 「実力テスト」;新潟/東海/京阪神/中 四国/沖縄など(高橋他1996) シッデ 「したい」;山形県酒田市付近;もとのシデから変化した形(井上1994) シッテァ 「したい」;最上p.179 シッデァ 「したい」;山形県庄内地方。新日p.253 シッパ 「すれば」;新日p.239 シッペ 「しよう」;新日p.239 シテカン 「してはいけない」;名古屋付近の若い人の間に広がりつつある;「シテハアカン」から;もともとのシタラアカンにくらべて,簡潔だし,「しなければいけない」のシナカンともそろう;Q p.138f シテン 「(何)してるの」;埼玉の若い世代で増加(埼玉) 〜シテン 「〜してみて(よ)」(依頼表現);「解イテミテン」「ヤッテン」など;子供はシテンテとも;若者はシテンカとも;熊本;福岡県南部でも(熊本大レポート) 自動車学校(教習所) →ジコウ/シャガク/シャキョウ/シャコウ(新潟大レポート1992) シナイカン 「しなければならない」;名古屋付近から岐阜県の若い人;老人はセナイカン(orアカン);Q p.136f シナカン 「しなければならない」;一宮付近の若い人;老人はセナアカン;Q p.136f→シテカン シナキャ 東京都(国広他1984) シナクチャ 東京都(国広他1984) シナケリャ 東京都(国広他1984) しなければならない →サンネ,スランネ 最上p.180 →サンナネ,スランナネ,サンナンネ 新乱p.289;→シネッキャ,→〜ナキャ,ナクチャ,ナケリャ シニ 「大変」;「シニオモシロイ,シニウマイ」など;以前は「シニハゴーサン(ひどく汚い)」など否定的に使っていた;沖縄県の高校生(儀間1987)。(野原1993) シニカブル 「死ぬほどきつい思いをする」;熊本(吉岡3) シネッキャ〜 「しなければ(ならない)」;福島県北部で増加;SFp.23f シネマネ 「しなければならない」;直訳すれば「シナイバナイ」;山形県庄内地方の若い世代でサネバネに代わって普及したようにみえるが,世代差がはっきり出ていない(井上1994) シバ 「そうしたら」;直訳すれば「スレバ」;山形県庄内地方の若い世代でシェバに代わって一時普及;その後共通語的なセバが普及した(井上1994) ジブン 「あなた」;相手を「自分」というのは,関西で中年以下に多い;東海道沿線の各地にも散在する;「自分は数学ができてエーナー」というのは,実は相手をほめているのである;「自分自身」と意味がずれていて,誤解しやすい;なお山梨県では古くからジブンを第2人称に使っていたという;Q p.190;京阪神はじめ西日本各地に散在,新潟付近や首都圏にも散在(高橋他1996) シメオニ 「鬼ごっこ」;山形県最上の山間部の若い世代に発生;下流部にはなかなか広がらない例;風景p.151 最上p.175;→タッチオニ シメゲシ 「鬼ごっこ」;最上p.175 ジャ 「では」;東海道沿線ではほぼ全地域で使われる;ただし近畿ではヤとも;東北/北海道では「ソウデナイカイ」のようにデを使うが,最近はジャが広がった;文章に書くとしたら「では」を使うことから,東京の口語,東京方言といえる;江戸時代に出現;→ヤ 〜ジャ 「だ,である」;→ヤ 〜ジャ 「〜ではないの?」の短縮形;「部活あったんじゃ?」のように,語尾あがりのイントネーションで付加疑問に使う;熊本の若い女性から拡大中(吉岡11) シャーシイ 「うっとうしい,不快だ,面倒だ」;博多の若い人;老人のシャーラシイまたはシロシイ(雨で濡れて不快だ)から意味が変化した(陣内1989,1990,1992);→シロシイ シャープペンシル 東神p.29 →シャーペン シャーペン 「シャープペンシル」;最近東京はじめほぼ全国の若者がいうが,近畿や関東/中部地方などで先にこの略称を採用していた;その後東京でも使われるようになった;よく使われるとことばが短くなる傾向の反映;文章で略すときにはシャープ/シャープペンとも;伊豆半島中年以下(永瀬1990a);新資p.24〜,243,373/東神p.29/SFp.50/Qp.60/東海p.110 ジャール 「である,そうだ」;那覇では質問への返事で「あー,であるさ」のようにいう;さらに新ウチナーグチとして「じゃーる,じゃーる」のようにいう(まぶい組1990) ジャイケン 「じゃんけん」;大阪徳島間で30代以下に点々と発生した;この地域の大部分は老人も含めてジャンケンだった(友定1994); ジャイケンシ ドッコイシ アイコデシ 「じゃんけんぽん」;北九州市小倉(熊本大レポート)→ドッコイ ジャイケン(デ) ホイ 「じゃんけんぽん」;兵庫県明石/滋賀県草津/愛知県岡崎付近の中年以下が使う;デを加えるのは関西圏;関東の人とやるとタイミングが狂う;Q p.68;→インジャン〜 シャガク 「自動車学校」の略(新潟大レポート1992) ジャカマシイ 「やかましい」;関西では中年以下の使う品の悪い言い方だが,今中部地方の若者に広がり,さらに全国に広がっている;やくざもののテレビ番組などが仲介したか;Q p.193 シャキョー 「自動車教習所」の略;札幌市(新潟大レポート1992),関西(高山1995) シャコウ 自動車学校;愛知県/三重県,新潟県/山形県/函館(新潟大レポート1992),関西(高山1995) 斜視 →アッチャメ,ガチャメ,オッチョコメ,ロンパリ,最上p.175;→テッカリ シャッコイ 「冷たい」;北海道都市部で増加(小野1988,1992) ジャナイ 「違う」;否定の答に,奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→チャンガー シヤル 元はシール(シヨル);和歌山(講座) 〜ジャン 「ではないか」;今全国の若者に口語として広がっているが,戦前に静岡県西部で発生した言い方(東海);「豊橋や静岡県平野部のジャンは昭和初期の流行」(山口1988);戦後長野/山梨から中部地方一帯に広がり,更に関東に進出したらしい;東京には,昭和30年代に横浜から入ってきた(東神p.65,東京都1986);ジャンは豊橋地方が震源で愛知県にも広がった(愛知県1985:9);長野県高遠町1901年生まれの女性が1958年の録音ですでに使用していることをテープで確認できた(NHK1967,小川1994で指摘);山梨県の方言集にも収録されている;山梨県全域で女性が使用(山梨);東海道とどちらが早い発生か未解明;山口県で増加(藤田他1990);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:38);今東北地方の山村にも首都圏のスキー客などから広がっている(新日p.8,46,257,264,282,288,291,295);語源は「ではないか」の略で,デハ→ジャ,ナイ→ンと変わった;伊豆半島やかつての横浜でジャが使われたこととの関係は未解明;三浦半島ではかつてジェー,ジェンに変わった(日野1952);なお山形県鶴岡の若者もジャンを使うが,もとからのデアン(であろう)から変化したものとも考えられる;関西ではジャンを使わない;代わりのヤンを以前から使っていたからだ;(井上1990,山敷1982,田中1991,古屋1991,新伝p.85,新資p.46〜,239,295〜);ジャンカが一段古い言い方と思われる;→ジャンカ,ソージャン,ヤン(カ),ジェー,ジェン; 井上1996.3:15 〜ジャンカ 「ではないか」;東京の若い人が使うが,三多摩では元からあった;横浜でも使っていた(金田一1983(初出1955));西三河へ東三河から;新日p.288; 井上1996.3:15 じゃんけん →川崎1981:78,1989:127;東京都1986 ジャンケングー インチャンポン 「じゃんけんぽん」;宮崎県児湯郡(熊本大レポート) ジャンケンツー アイコデツー 「じゃんけんぽん」;宮崎県延岡市(熊本大レポート) ジャンケン ドッコイ/ショッ(シッ) 「じゃんけんぽん」;北九州市の一部(真田1992,p.81);もとからのジャンケン/シッと新発生のドッコイ/ショッ(シッ)の混交として生じた じゃんじゃん語 東京弁,「〜じゃん」ということから,関西の学生が使う(高山1995); 井上1996.3:15 〜ジュ 「ている」;「木 生エジュー(生えてる)ハンデ」「知ラレジュンダ(知られている)」;青森県津軽若者(佐藤1986);→チュ ジューガツ(十月のアクセント) 山陽道一帯の若年層で尾高(4)から頭高(1)に変化(馬瀬他1995);月の名は−3音節にアクセント核を移す傾向;四月の頭高化は終了寸前 〜ショ 北海道の若者(石垣1983);静岡市でも使う(「〜だったしょ」のように,学生レポート1994.10);→〜ッショ,イイ(ッ)ショ(ー) しよう →スッペ 最上p.177 →スッベ,スッペ 新乱p.294 ジョーオー 「女王」;四国各地/山陽の若者に多い(高橋1986b);東海道全域で増加(Qp.31) 定規 東神p.28 →センヒキ 昇降調 @→尻上がりイントネーション;A鹿児島の若い世代に増えている質問のイントネーション;「イケルケー」「シンブン ヨムー」のように使う(木部他1993,木部1995);東北方言でもyes-no疑問文が昇降調であると報告されているが,イノトネーションは音声的可能性が限られているために,各地で独立に同一の現象が発生する可能性がある;→ケー 井上1996.3:23 ジョーズイ 「上手な」;九州北部西部で元ジョーズカと言っていたので,形容詞カ語尾をイ語尾に変える過程で過剰修正した(陣内1992);→イ語尾 ジョートクナル 「上等になる」;沖縄で児童生徒が使う(本永1979) 上品カ 九州(藤原1992:63);→カ語尾 丈夫イ →元気イ,イ語尾 ショッパイ 「塩辛い」;もともとは東日本の方言だったが,愛知以西の若い世代にも進出中;中学生ではほぼ全国で70%以上の使用率(井上1995.1);近畿各地(真田1990:303);京阪間の青年層では50%程度の使用率,改まった場面での使用率が低いので「新方言」扱いされている(真田1988);東京都(東京都1986);兵庫県城崎町(佐伯1990);下関市/北九州市の高校生に多い(岡野1991,1996a);北九州市若年層(岡野1985a);福岡県(岡野1987);小倉/博多の若年層の半数近くが使う(陣内1996);新資p.178〜,246,410 Q p.76 ション 元は「シヨルノ」;広島安芸郡(講座) 尻上がりイントネーション 「ソレデェ」などで使われる若い女性に多いイントネーション;上昇/下降/\を伴い伸ばされる;「昇降調」「女子大生口調」「語尾上げ/語尾伸ばし」などとも言われる;1970年代から東京付近で広がった;1960年代に東京の子供が使っていたという報告もある;ネサヨ禁止運動のために代わりに出てきたという説が有力だが,年代的には合わない;ネサヨ運動は鎌倉市腰越小学校で1961年前後に始められた;なお,オーストラリアでも若い女性が疑問文のようなイントネーションを中止(継続)のために使う傾向があり,アメリカでもuptalkというイントネーションが進出している;→井上1993a,1995 井上1996.3:23 シレ 「しろ」;北海道奥尻島の若年層が使う;老年層はセ,ヘ(小野1980);新日p.118 しろ →シレ,スレ シロシイ 「濡れて不快だ→わずらわしい」;博多で意味が変化(陣内1996);→シャーシイ シン 「しない」;西日本ではセンまたはセーヘンがもともとの言い方;東海地方付近の若い世代がシンというのは,シタ,シナガラなどと語幹を合わせたのだろうが,共通語のシナイの影響も考えられる;(井上1995.4,Q p.134);→シーヒン シンカッタ 「しなかった」;岐阜若年層で増加,元はセナンダ/セーヘナンダ(真田1991);浜松以西兵庫までの東海道線沿線で,老人も使うが中年以下で増えている(井上1995.4,Q p.216) シンキクサイ 意味変化の起こった例;奈良県南部で,老人は「じれったい」「性格が暗い」の意味で使うが,若者は使うとすれば「性格が暗い」の意味だけ(真田1996) シンケーン 「まじー」(=真面目)にあたる;沖縄の高校生が1980年前後に使い始めていた(まぶい組1989,野原1993) シンケン 「大変」;別府付近を発祥の地として,大分県にこの20年ほどで拡大;老人のシラシンケン(修羅真剣)からの変化か(田中1992,1993,日高1994,陣内1996);井上1996.3:6 シンケンニ 「大変」;大阪付近で耳にした(小矢野1985) シンジランナーイ 「信じられない」;大学生では東日本の女性のほぼ全員と西日本各地に点在;男は少ない;関西ではシンジラレヘンが圧倒的(永瀬1995) シンジランネー 「信じられない」;東京の若者語のシンジランナーイをまねた鶴岡の高校生の言い方(1988年頃);鶴岡の元々の言い方はシンジラエネ,またはシンジライネ(口頭報告) ジンジロ 「つむじ」;大阪府南部の10代に広がる,20代以上はジンジリ(熊取町1984);かつての歌の文句のジンジロゲが影響したのか? シンドイ 「疲れた」;徳島県内10代にセコイに代わってシンドイが普及中,大阪側では全世代シンドイで,大阪弁の影響とみられる(友定1994) シントケ 「しないでおけ」;愛知以西,大阪付近の若い世代;Q p.134 新方言 若い世代で使用率の高まる標準語的でない言い方;次の3条件にあてはまるもの;「若い世代に向けて増えている」「標準語/共通語と語形が一致しない」「地元でも方言扱いされている」;「新方言」の使用例は以前にある;ただし術語として定義されたものでなく臨時的用法である;柳田国男『蝸牛考』(岩波文庫p.36,定本柳田国男集18巻p.26),「北海道語ともいうべき新方言が発生し居る・・・・」(東条1944:45),「(「校区/校下」は)明治五年以後の新方言で・・・・」(柴田1987:71,初出1970); 英語のnew dialectは,臨時的用法で見られる他に,Trudgill(1986)では植民地などの体系としての方言を指す;沖縄で発生したものについても「新方言」という名称が使われるが,定義づけは多様である(永田1991、1993、中松1993);真田(1990)の「ネオダイアレクト」neo-dialect,「ネオ方言」は方言に共通語の影響があって生じたもので,体系としてとらえうるとする(工藤他1993);若い世代で増えている非標準語形でも,地元の人が方言扱いしていない(打ち解けた場面のことばとして使う)としたら,定義上「地方(地域)共通語」として扱われる;その違いは理論的には,母語として身につけたか,意識的に言い替えとして身につけたかに求めることができる;調査技法上は使用率の場面差を調べることになるが,大量調査が必要なので,信頼できるデータがすべての現象にそろうわけではない;この「辞典」の収録項目も,世代差のある非標準語形の収録を心がけたので,「地方共通語」が混じっている可能性もある;なお北京語の新方言「最近北京市内の若年層で流行っていて,公の場面で使うのはふさわしくないと思われている語」が,久野1992に掲げてある;→地方(地域)共通語,ウチナーヤマトゥグチ,ネオダイアレクト シンネー 「知らない」;佐藤1993a:52 ス ズイコンバイコン 「おおばこ」;長野市付近の子ども,元はオンバコ(馬瀬1963);→ギーコンバイコン スイマセン 「済みません」;東京付近での略し方;地方ではスンマセンと略す;まず話しことばとして広まった;相手にタバコを差し出した外人は,感謝の返答を「吸いません」と聞き違えるとか;今は書きことばにもよく出るようになった;なお,名古屋付近では感謝の挨拶に昔からスミマセンをよく使っていたという;東神p.82;SFp.66 スーツです? 井上1996.3:25 スカス 伊豆半島中年に散在(永瀬1990a);新資p.114〜,244,388 スキクナイ 「すきではない」;首都圏の若者に急にひろがったが,テレビ番組で使われたためか;今は全国各地の若者に知られている;東京付近の青年層使用率約30%(高橋他1994);「好き」の意味が形容詞的だから,形容詞の活用を採用した;テレビ番組から広がったという説もある;1982年の流行語(榊原1988);群馬の大学生の40%近くが使い,「流行語」と意識(山県1988);伊豆半島中年以下(永瀬1990a);新資p.56〜,246,403/東神p.78/新日p.256,282;SFp.64;東海p.122 スクーター 井上1996.3:20 スゴイ 「すごく(早い)」;新資p.190〜,247,417 スタン 「大変」;「スタン ワルカ」など;熊本(熊本大レポート) スタンツ 「だしもの」;東海/京阪神の都市部(高橋他1996) ズッコケル 「急に調子が狂う」;東京若者で増加(新資p.244,389,荻野他1985); スッコロブ 「転ぶ」;関東各地や福島県北部の若者が使用;新乱p.311/SFp.73 スッタイ 「したい」;新乱p.292 スット 「すると」;栃木茨城から群馬の若年層へ進出(佐藤1993a:114) スッパ 「すれば」;新日p.217 最上p.180 ズッパ 「ズックのかかとをつぶしてスリッパのようにはくこと」;福島県で(地平p.31) スッパイ 「酸っぱい」;西日本には俗語的にひびく言い方が東日本から進出した例;神戸付近では老年層も(真田1993);近畿各地(真田1990:303);京阪間の青年層では改まった場面でも使用がやや多いので定義上「新方言」とはいえず,共通語形として普及中(真田1988);下関市/北九州市の高校生(岡野1991,1996a) スッパイッケ 「酸っぱいから」;新潟県出雲崎(大橋1988);→シタッケ →ッケ スッベ 「しよう」;新乱p.294 スッペ 「しよう」;地平p.83,最上p.177/新乱p.294/新日p.45,165,196,217 スッポン 「スイバ/スカンポ」;新潟県上川村の一部の若年層;老人はスカナ;若年層大部分は無回答(新潟大1994) ステラ(ー)ヘン 元は「捨テリャ(ー)ヘン」;鳥取(講座) 〜スト 元は「〜ズト」;名古屋(講座) ずぶぬれ →カッパダレ 最上p.176 スユイ 「すっぱい」;壱岐若年層の一人(友定1994b) スランナネ 「しなければならない」;新乱p.289 スランネ 「しなければならない」;最上p.180;→サンネ スリボー 「すりこぎ」;北海道奥尻島の若年層が使う;老年層はメグリ/メグリボー(小野1980);大阪徳島間でスリコギに代わってスリボーが普及中(友定1994);→スルボー ズルコミ 「割り込み」;東京付近の最近の新方言;ずるい割り込みの仕方だから,こう名付けたのだろう;ヨコハイリは全国的に使われるが,ズルコミは使用地域が東京付近に限られているようだ;千葉県各地(平野1992);東神p.52; スルボー 「すりこぎ」;北海道奥尻島の若年層が使う;老年層はメグリ/メグリボー(小野1980);→スリボー スレ 「しろ」;新日p.118 〜すれば(いいのに) →スッパ 最上p.180 スワッテオク 「(前もって)座っている」;西日本一帯(高橋他1996);→ノコッテオク,〜テオク セ セ 「しろ」;語源は「セイ」;山形県庄内地方の若い世代でシェに代わって普及;郊外では一時シも普及した(井上1994);→セバ ゼイアール 「JR];熊本の中年層;もとゼを方言音でジェと発音したので,なおしすぎた例(hypercorrection);新方言ではないが参考までに(吉岡1990);鳥取でも同様という(前川);「中間方言」として福岡県都市部の中年以上の女性の一部が使う(陣内1995,1996) 正座 井上1996.3:19 セイヤ 「しろや」(文末詞);元はセイジャ;瀬戸内沿岸(室山1977) セコイ 「けち,ずるい」;東京で盛んに使い,全国の若い人のあいだに広がった(新資p.166〜,246,407/東神p.89/新日p.10,東海p.128,地平p.28);徳島県付近では「疲れた」の意味で昔から使われていた;今は四国全体で「けち,ずるい」の意味で使われるようになった(高橋1990,中井1993);吉本興業のタレントさんが1970年代はじめころから使っていた(松本1994);犯罪者隠語よりの借用か(前田1965) セズ 「しよう」;老人はシズ;山梨県(吉田1994) セバ 「そうしたら」;直訳すれば「スレバ」;山形県庄内地方の若い世代でシェバに代わって普及;郊外では一時シバも普及した(井上1994);→セ セラザー 「しよう」;老人はシザー;山梨県(吉田1994) セレレン 「できない,やってられない」;大分県日田市の若年層(柴田1991) センカッタ 「しなかった」;四国全体と山陽/大分の若者に普及,元はセザッタ(高知)セナンダ(四国/山陽など)(高橋1986b,1986a,高橋1996);北アルプス以西の全域で使用(高橋他1996) センカッタラ 「しなかったら」;徳島県でセナンダラに代わって10代に急速に普及(友定1994);淡路島ではセーヘンカッタラが代わりに普及し,センカッタラは古方言 ゼンゼンイイ 「とてもいい」;東神p.72 センデモ 「しないでも」;元はセイデモ;瀬戸内沿岸(室山1977) センヒキ 「プラスチック製の定規」;全国の中学生に普及(新資p.30〜,246,372/東神p.28/新日p.169,263,264;Qp.58);京都北部でも使用(加藤1988);佐藤1993a:48,1993b →定規 ゼンブデシタ 「売り切れました」;鹿児島市の地方共通語(木部1995) 専門家アクセント 首都圏の若者は,今一部の外来語のアクセント(音の高低)を平板にしている;バイク/サークル/ドラム/デッキなど;自分の興味ある分野の単語で変化が先行するようである;現在の状況をとらえて,「世代方言」と呼ぶ人もいる;ヤンキー/チーム/メンバーのように,以前と違った意味で特殊な集団を指すときにも平板化する;カレシのように和語も平板化が進んで,意味に使い分けが生じている;新しい二重語doubletteの誕生である;漢語や地名などでこの傾向は以前からあった(井上1992,田中1993b) 地方でも平板化は進んでいる;広島でも外来語アクセントの平板化が見られ,「スクーター/モデル/ドラマ」などの世代差が大きい(馬瀬他1995);発音を聞かせて印象を聞いたところ,平板型は「都会的/若者的」という印象を与えることが分かった(馬瀬他1994);同様の現象は東京都町田高校/長野県須坂高校でも確認された(馬瀬他1992);下関市の女子高で音楽科の生徒は,ピアノ/フレーズ/聴音/ソルフェージュ/バレエ/ギター/ドラムなどを平板型で発音し,普通科の生徒と違う(藤丸1994);関西でも外来語アクセントの低起無核型が若い世代に出現している;「SF」「FM」「スタジオ」など;3拍以上の外来語3241語中,高年30語程度から若年50語程度に増加;アクセントの東京化のひとつと位置づけられる(郡他1989);関西でも平板化した語(HHH...)としない語(HLL...)での意味の使い分けが出ている(彼氏/ショップ/ダンサー/チーム/ボードなど)(高山1993) 芸名について,一部の人が平板化する現象は,風間1994によれば,戦後まもなくからあったらしい;松緑が「表六玉じゃあねえんです」と言ったという;秋永氏も1970年代に口頭で落語家の芸名の平板化を指摘しておられた;1990年代ではB'z(ビーズ)のアクセントが問題;本人達は頭高と思っているがファンは平板でいうとか 井上1996.3:20 ソ ソイギ(ー) 「それじゃ,さよなら」;佐賀市(熊本大レポート) ソイデ 「それで」;群馬で増える(佐藤1993a:95);東京でも使う;接続詞としての用法で;またアレデ,コレデ,ドレデのレは変化しない(観察1994);→ソンデ 〜ソー 「〜さ」;伊豆利島で,老人のソーローを若い人がつめて(金田一1977) ソージャン →ジャン 東海p.138 ソースルッキャナイ 「そうするしかない」;動詞に「ッキャ」を付けるのは,最近の東京の若い世代に広がった言い方;若者の約半数が使う;今は首都圏はじめ全国各地で散発的に使われる;新資p.50〜,248,423;田中1991によると神奈川の高校生では「スルッカナイ」も入れて37.6% ソーダレバ 「それなら」;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→〜ダレバ ソートー 「大変」;北九州市東部(陣内1996) ソーヤ 「そうだ」;西日本はもともとは「だ」を「ジャ」というが,各地の若い人が「ヤ」に置き換えている;→ヤ 井上1996.3:16 促音化 東京での長音の促音化;カの前で起こる;「イッカ」「ソッカ」「イコッカ」など;→ッカ ソッカ 「そうか」;東京の話しことばで長音+カの一部が促音+カに変化しつつある;推量の助動詞ウ+カも同様(イコッカなど);「こうか/ああか/どうか」は促音化しない;→ッカ ソレッチ 「それは」;東京の若い人のソレッテを翻訳して大分県の若年層がいう(日高1994) ソレッテ 「それは」;東京の若い人が相手の話題をさして使い始めている;「それって変じゃない?」など;福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:39) それならば →ホンナゴッタラ,ンナゴッタラ,ホンダコッタラ,ンダコッタラ 最上p.177 ソレヨカ 新資p.196〜,248,424 ソンデ 「それで」;東京の口語;かなり前から使う人がいた;佐藤1993a:91,1993b →ソイデ タ ダアル 「そうだ」;沖縄(本永1979);→デアル ダールー 「そうだ」;沖縄中部(野原1993) タイガイ 「大変」;熊本,タイギャとも;福岡,佐賀(熊本大レポート) 大学落し →ガンバコ 井上1996.3:7 タイギャ 「大変」;熊本;歌手森高千里の「古今東西」の間奏のせりふで「馬刺がよか,久しぶりだけん,たいぎゃ楽しみ」が出てくる(日本語倶楽部1993);→タイガイ 井上1996.3:6 大高中小 →ガンバコ 井上1996.3:7 ダイジ 「大丈夫」;群馬や栃木の若者のあいだでは「ダイジ」と言う;転んだ子に「ダイジ?」など;栃木方言で「大丈夫」を「ダイジブ」というので,「大事」と紛れて出きたのだろう;佐藤1993a:118,1993b タイダ 「だめだ」;山形県酒田市付近の若い世代に多い;ダエダとも(井上1994) タイナ 「大変」;タイガイ/タイギャとも;熊本(熊本大レポート1992)→タイガイ タイニャ 「大変」;伝統的方言のタイギャ(大概)の改新;熊本(吉岡9);→タイガイ 大変 → イジ(長崎),ウマンゴツ(熊本),ウルトラ(鶴岡),ガバ/ガバイ(佐賀福岡),ギャン(福岡熊本),シンケン(大分),スタン(熊本),タイガイ/タイギャ(熊本福岡佐賀),タイナ(熊本),チカッパ/チカッパイ(福岡),チョー/チョ(東京他),テゲ/テゲー(宮崎),デタン(北九州),ナバ/ナバヒー(熊本),ナマラ(北海道/新潟),バリ(長崎),マーゴッ/マウゴツ/マーゴ(熊本),ムシャンゴツ(熊本),ヤッチャ(島原),ワッゼ(鹿児島) タイヨーシ 「模造紙」;新潟/熊本付近(小林他1996)→ビーシ,トリノコヨーシ ダエー 「面倒だ」;金沢の若者(北国1995);→ダヤイ ダエダ 「だめだ」;山形県庄内地方(井上1994);新日p.252;→ダイダ タカナイ/タカーナイ 新資p.64,184〜 ダカラ 「そう(あいづちの感動詞)」;沖縄で(本永1979,小林他1996) (〜)だから 新乱p.301;→ンダガラ,ダケ ダケ 「だから」;北九州市の若年層(岡野1992b) ダゴアクシャ 「極めて困ってしまうこと」;熊本(吉岡2);→アクシャ 〜ダゴンパ/ダゴッパ 「(きれい)なら」;新乱p.297 ダサイ 関東に普及(地平p.19);新資p.246,406/東神p.68 ダシャー 「ダサイ」;熊本(吉岡5,熊本大レポート) ダチイタ 「うまくいった」;ダチカン(いけない)の逆成;岐阜県飛騨(川崎1981) 〜タッケ 福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:40);→ケ,ッケ 〜ダッケ 静岡以東は老人も使う;岐阜以西の若い世代に普及中;Q p.220;→ッケ 〜タズラ(ダズラ) 「〜ただろう」;元は〜ツラ;場合によっては〜タラとも;山梨県(吉田1994) 達者カ →元気イ ダッタ 「そうだった(思い出して)」;鹿児島市の若者,ジャシタの訳(木部1995);→デスヨー,ダヨー タッチオニ 「おにごっこ」;山形県新庄市の子供の新方言;老人は方言のオニゴか,共通語のオニゴッコを使っていた;今は地方の子供も遊びに外来語を使って言うくらいススンでる;最上p.175/新日p.45,162 タットンシャル 「立っておられる」;元はタッテゴザル,タッチョンナルなど;福岡県(岡野1987) 〜ダッペ 「(山)だろう」新乱p.295/新日p.186,195,200 〜ダニッテ 「〜だから」;伊豆利島で老人のダニヨッテを縮めて(金田一1977);→〜ダンテ 〜ダバー 「なのか?!」;沖縄のこどもたちが「コレナンダバー」「コレ辞典ダバー」のように使う;驚きを含んだ表現(まぶい組1989,野原1993:51); 井上1996.3:19 タバコオ フク 「タバコを吸う」;沖縄方言のタバクフチュンを直訳した言い方(平山1984,陣内1992);→ウチナーヤマトゥグチ 〜ダハズ 「だろう」;沖縄方言ヤルハジの直訳;「サビシインダハズヨウ」など,また独立にも使われる;沖縄県の高校生(儀間1987,本永1979,小林他1996);→ハズ 〜ダヘ 「だろう」;→イクンダヘ 〜ダベー 「だろう」;埼玉付近で増加;老人はダンベー;新日p.194f SFp.29;神奈川(田中1991);→ベー 井上1996.3:17 タベラス 「食べさせる」;四国ほぼ全域の大学生(高橋1996);→ラ行五段化 タベラン 「食べない」;北部九州(陣内1996);→ラ行五段化 タベリ 「食べなさい」;北部九州(陣内1996);香川西端と高知西端の大学生(高橋1996);→ミリ,〜リ タベリー 「食べなさい」;関東,関門地域で増加(佐藤1993a:175,岡野1992b) タベリン 「食べなさい」;愛知県東部の少年層に増加,老人はタベヤと共存(江端1981);→〜リン タベレ 「食べろ」;愛媛西端と高知西部など四国各地の大学生(高橋1996);→ミレ タベレル 正しい日本語は「食べられる」;東京でも若い人に広がっている(国広他1984);新潟;→ラ抜きことば タベロー 「食べよう」;博多で増加;肯定意志でも,肯定推量でも(陣内1993:73,86,88);香川愛媛高知全域の大学生(高橋1996) ダメッポイ → 〜ッポイ 伊豆半島(永瀬1990a);新資p.180〜,246,412 ダヤイ 「面倒だ」;金沢の若者(北国1995);→ダエー ダヨー 「そうだね(あいづち)」;鹿児島市の若者,ジャッドの訳(木部1995);→デスヨー,ダッタ ダヨネ 井上1996.3:6 〜タラ 「〜ただろう」;元は〜ツラ;場合によっては〜タズラとも;山梨県(吉田1994) 〜タラ 「ば」;関西から拡大中(国語研1983);京都北部でカキャーからカイタラに変化中(加藤1988);大垣以東の若年層に進出(井上1994z);京都郊外で「痴漢に会えば大声で助けを」の看板発見(1993);タラが方言的表現ととらえられている証拠;文章にするときに直しすぎhypercorrectionをした;ヤと同様に,関西からの伝播で,博多若年層で増える(小林他1996) 〜ダラ 「だろう」;東海地方で「あるだら,山だら」のように使う;今は中年以上の使用者もいるが,昔の「あるずら」などの表現にくらべれば新しい(井上1995.4,風景p.144;Q p.105,144,145,212);共通語の「だ」と方言の「ずら」とが混じってできたもの;ダ+ラの2要素に分析できることでも,ズラより新しい現象とみられる(徳田説) ダラ 「大変」;「ダラカッコイー」など;愛知小学生(口頭報告);→ドラ,デーラー タラナイ 新資p.132〜,248,428 タルイ 「大儀だ」「だるい」;カッタルイの略;最近東京の若者に広がった;伊豆半島一部(永瀬1990a);新伝p.84,新資p.40〜,240,328,新日p.10,279 〜だろう →山ダベ,ダッペ,ダベー,ダラ 〜ダレバ 「(それ)なら」;→ソウダレバ 〜タロー/〜タヤロー 元は「〜ツロ」;愛媛(講座) 〜ダン 「〜だもの」;ダモンの短縮形;熊本(吉岡6) 〜ダンテ 「〜だから」;伊豆利島で老人のダニヨッテを縮めて(金田一1977);→〜ダニッテ タンナイ 「足らない」;新資p.130〜,248,427,東京都(国広他1984) ダンベー 井上1996.3:17 タンマ 「タイム」;子供の遊びを一時止めるときのかけ声;関西の若い人はタンマという;昔は「休み」とか「一服」と言っていたらしい;東日本ではタンマは古くなって,若い人はタイムという;京阪中年以下(近畿1994); チ 〜チ,ジ 「〜て,で」;福島県などで,(re)teが/tje/を経て変化;チェ/tje/は音韻体系からいって位置づけの難しい発音だったので,もっとありふれたチ/ci/に置き換えた;福島県(講座);新日;→クッチ,〜ニ 〜チカイ 「〜のに,〜てから,〜たりして」;熊本(吉岡6) チガウカッタ 「違っていた」;兵庫県;沖縄でも児童生徒が使う(本永1979);→カッタ 井上1996.3:9 チガカッタ 「違う」の過去形,「違っていた」;最近の東京の新方言;意味が形容詞的なので,過去の継続的な状態を示すのに「カッタ」をつけたのだろう;関東北部や東北南部では,昔から使っていた;埼玉/千葉を経て,東京下町の若者の言葉になったらしい(地平p.136);東京都付近では青年層使用率40%近い(高橋他1994);神奈川にも進出中;群馬県(ことに東部)では,東京型の新方言として10年間で使用者が増えた(佐藤1993a:61,1993b,1994);1991年に静岡県出身の大学生も言うと聞いた;1993年東京外国語大学のレポートに「ちがかった」と書いてあったので驚いた;1994年には広島の中学生と母親が使いはじめたとの報告があった;福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:27);沖縄でも児童生徒が使う(本永1979);マンガや深夜番組経由の飛び火型伝播か? 新伝p.53/新資p.42〜,241,334〜/東神p.56/新日p.9,21,27,28,33,46,256,257,279,282,294,295 語楽p.129,東海p.120;→チゲー,チガクナッタ 井上1996.3:9 チガク 「違って」;外語大レポートの文章で「違くはないのか」と書いた学生あり(1994);茨城出身;形容詞としての用法が拡大しつつある チガクテ 「違っていて,違って,そうじゃなくて」;「チガクテー」と,尻上がりイントネーションでいうのを,首都圏で耳にする(井上観察1994); 井上1996.3:9 チガクナイ 井上1996.3:9 チガクナッタ 「違った/同じでなくなった」;「チガクナッタ」という言い方も便利である;地方によっては,以前から「チガウクナッタ」と言っていた;地方での形容詞の勢力拡大の一例である;伊豆半島では老人もいう(永瀬1990a);新資p.245,402/東神p.57/新日p.9/SFp.53,佐藤1993a:67,1993b;→チガカッタ 〜チカッ 「〜のに」;「待っとったチカッ 来んかった」;熊本市(外語大レポート1994) チカッパ 「大変」;福岡県(熊本大レポート); 井上1996.3:6 チカッパイ 「大変」;「力一杯」の変化;以前はバリを使っていた;福岡で「チカッパイ シンドカッタ」「チカッパイ キツカッタ」のように使う(小矢野1985);福岡県に使用者が出ている(陣内1993:66);福岡県(熊本大レポート);若松/八幡地区のみ(岡野1988b); 井上1996.3:6 チカライッパイ 「大変」;福岡;大阪でも聞いた(小矢野1985) チゲー 「違う」;都内某男子校では圧倒的使用率(鑓水1994);「別冊マーガレットお正月増刊」(1991.1.10号)に漫画の用例「バーカ ちげーよ」あり;1992年東京外国語大学のレポートによれば,埼玉県川口市や東京都内の塾の中学生が「チゲー」といっているとのこと;その後高校生も使っているとの口頭の報告もあり,急速に広がっているらしい;新しい形容詞「チガイ」の終止形が,まず口語的な形で出現したわけだ;ただし「チガイ」という音融合以前の形は1994年現在報告を聞かない;→チガカッタ 井上1996.3:9 チケッペ 「大変」;大分県豊後高田市;「力一杯」の変化(柴田1991);→チカッパイ チゴカッタ/チゴカレバ 「違った/違えば」;鹿児島の子供;動詞終止形でチガウがチゴになることから発生した(牛留1975:316);→チガカッタ 井上1996.3:9 チッケッタ じゃんけんのかけ声;東京で使われるようになったが,もともとは千葉/埼玉あたりの言い方;「じゃんけん」はじめ,子供の遊びのことばは,今でも各地で新しく生まれ変わっている;房総南端ではチッケッタ系は中年で出現,若年で減少;チッケッピが代わりに進出したため(昭和1994);新伝p.84/新資p.34〜,244,380/新日p.9,46,263〜265,279,281,282;→じゃんけん チッケッピ系 じゃんけんのかけ声;房総南端ではチッケッタ系に代わって進出中(昭和1994:62) 〜チッタ 「てしまった」;チャッタの簡略表現;関東の若者から東京都内に流入した(地平p.134,SFp.19,荻野他1985);茨城県付近で発生したのか;埼玉県の使用率が都区内よりやや多い(埼玉);アラレちゃんの漫画などでも登場するが,アラレ語ではなく,東京付近の若者の言葉である;1989年前後,ボーカルグループCCBのディスクジョッキー番組で「バレチッタ」を耳にした;1986年頃法政大学の文集で「ヤベー,財布忘れチッター」と書いてあるのをみた;「別冊マーガレットお正月増刊」(1991.1.10号)に漫画の用例「クビになったのかと思っちった」あり;神奈川県高校生1.7%(田中1991);チャッタとその前身チマッタ自体も明治時代に関東方言から東京山の手に流入したもの;→ミチッタ 井上1996.3:10 チッチャイ 「小さい」;房総南端ではチャッケーに代わって進出中(昭和1994);デッカイと対の表現;「細かい」の意味で,壱岐若年層(友定1994b) チビチャイ 「小さい」;もとはチビサ;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→ナガッチョロイ チビライ 「すばらしい」;沖縄口のチビラーサンを間違って大和口化した(儀間1987) 地方(地域)共通語 「新方言」と定義上ペアになりうる現象;若い世代が取り入れた現象でも,使用者が誤って全国共通語/標準語と思っているものもある;場面差を考慮に入れた調査で確認できる;北海道漁村部でのトーキミがその例;一方「気づかない方言」との関係も問題になりうる;→新方言,気づかない方言 チムイ 「かわいそう」;チムグルサン(かわいそう)を共通語化;沖縄県の高校生(儀間1987,野原1994); 井上1996.3:19 〜チャ 「よ」(終助詞);下関市/北九州市(岡野1991);→ッチャ,ガッチャ 〜ヂャ 「だ,である」;→ヤ 〜チャー 「られる」(尊敬語);オッチャーなど;元はオッテジャ;広島県熊野町の中年以下の女性と青少年層(神鳥1989) チャーリー 井上1996.3:5 〜チャイ →〜ッチャイ 〜チャウ 「〜ではない」;「(と)違う」から出た;父母で使っていた人は近畿付近だが,中学生では全国各地に広がりつつある(新資p.63,96〜);中年では中国/四国東部の人も使う;その後関西地方の周辺部の若者にも普及した(Qp.211/東海p.121);淡路島徳島間で「イクンチャウ」などが普及中(友定1994);金沢の大学生も使うことがある(北国1995);過去はチャウカッタ;牧村1955でチヤウのみが載せてあるように,大阪では昔はチヤウといい,更にチャウに短縮された(前田1965);風景p.142 チャウカッタ 「違っていた」;大阪徳島間でチゴートッタなどに代わってチャウカッタが急速に普及(友定1994);滋賀県で普及(真田1991);→チャウ 井上1996.3:9 〜チャッタ 「てしまった」;東海道沿線では名古屋以西のほぼ全世代が使うが,滋賀以西では若い世代に点在するだけ;テシモ(ー)タの勢力が強い(Q p.97);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:37);→ミチッタ,チッタ チャリ 「自転車」;泉南市1991;福岡県にも使用者(陣内1993:56);大学生では全国各地で使用,チャリンコより多い(永瀬1995);→チャリンコ,ケッタ 井上1996.3:5 チャリキ 「自転車」;泉南市1991; 井上1996.3:5 チャリゲ 「もみあげ(の毛)」;大阪(岸江1988) チャリツウ 井上1996.3:5 チャリンコ 「自転車」;東京で1970年頃から使われ始めた言い方;大学生では全国各地で使用(永瀬1995);チャリキ,チャリ,チャーリーと縮めることもあるし,ゲンチャリ(原動機付き自転車=バイク),カマチャリ,ママチャリ,マジチャリ,チャリツウ(自転車通学)などのことばも再生産している(吉田則夫によると岡山市でも使うという);戦後まもなくはチャリンコは「こどものスリ」を指すことばだった;それが意味変化(またはことばの廃物利用)を起こしたらしい;韓国語の「自転車」によるという説(真田)もある;東海地方に広がっていないのは,以前から若者の間にケッタ/ケッターが使われているからである;伊豆半島中年以下(永瀬1990a);泉南市1991;奈良市(真田1989:18);京都北部(加藤1988);京阪2,30代以下(近畿1994);新資p.92〜,239,308〜/新日p.288,293/Q p.70; 井上1996.3:5 チャンガー 「そうだ」;肯定の答に,奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→ジャナイ チャンチャコ 「肩車」;最上p.175 チャンチャンコ 「肩車」;最上p.175 〜チュ 「ている」;「人の倍はクッチュ(食っている)」「スリップシチュ(している)ッキャ」;老年の〜teraからtea>tjaを経て変化;青森県津軽若者(佐藤1986);→ジュ 〜チュー 「ている(結果態)」;高知県で周辺部の若者へも伝播,元はタマットル/タマッチョル,(電気ガ)ツイチョルなど(高橋1986b) 中興方言 新方言として普及した言い方が後に使用が衰えたもの;共通語の進出やさらに新しい言い方が若い世代に使われることによる;年齢差では,壮年/青年に使用のピークがあり,10代の使用率の低いものをいう;→キャア チュブリーン 「つぶれる」;40代の人の使う沖縄口で;本来はシッピリーン(儀間1987) チュブル 「頭」;沖縄口のチョボロを間違って大和口化した(儀間1987) チョ →チョー 〜チヨ 「〜そうだ/〜てよ」;下関市/北九州市(岡野1991) チョー 「大変」;最近東京の若い人が「チョーおもしろい,チョーすごい」のようにいう;ところが東海道沿いの年齢別調査によると,静岡県では20代の人もいう(Q p.196);静岡県で発生して神奈川を経て東京に入ったのかもしれない;『現代用語の基礎知識』に最初に載ったとき「青山あたりの子が使う」としてあるのに符合する;「日本女子大生は超むずかしいという」(1984年)として最初は流行語扱いだった(榊原1988);さらに「チョー怒られちゃった」のように動詞などをも修飾するようになったし,チョ,チョラク,チョスゴのように略した言い方も発生した;「超豪華な」とか「超国家的」などがアクセントからいうと二つに分かれるので,本来接頭辞=造語要素の「ちょう」が独立して使われるようになったのだろう(井上1993b);房総南端の中学生では約1/3が使用(昭和1994);大学生では全国各地で使用(永瀬1995); 井上1996.3:6 チョーセンケズリ →ドロボーケズリ 〜チョク 「ておく(完了態)」;「て置く」の音融合形「チョク」と以前からの「〜チョル」の用法の混同による;大分県中年以下(田口1992);「先にタベチョク」は「先に食べてしまっておく」の意味;老人も使う(日高1994);→ヨク チョッキシ 「ちょうど」;東海p.137 〜チョネー 「〜ていない」;聞イチョネーなど;大分の中学生;キイチョランにキイテネーが混交したもの(松田1991,日高1994);→キイチョネー チョレー 「ちょろい」;熊本(吉岡12) チョンチョ 「蝶」;広島県北部(町1987) チラケラホイ じゃんけんのかけ声;房総南端でチッケッタ系に代わって進出中(昭和1994) チレテル 「散らかっている」;鹿児島市の若者;老人はチレチョッ(木部1995) チングルマイ 「肩車」;新潟県糸魚川付近で,老人のテングルマイから(国語研1985:140,徳川1993:362) チンゴロマイ 「肩車」;新潟県糸魚川付近で,老人のテンゴロマイから(国語研1985:140,徳川1993:362) チンチコモリ 「肩車」;最上p.175 ツ 〜ツー 「〜という」;「牛ツーモノ」のような言い方は東京下町で大正末期に始まり,戦前に山の手にも普及し,子どもに広がりつつあった(都竹1943);1990年代の学生の一部が使うだけで,文体差があるため,変化速度は遅いようだ(井上観察1995);ただし教師に話しかけるときのような改まった場面でも使う学生がいる(1994観察) ツエー 「強い」;房総南端の中学生では半数近くが使用,中年はツイェー(昭和1994);東京でもイェの発音が無くなった;標準語の発音に近づいたとはいえないが,東京語化/東京弁化とはいいうる;→ハエー/ヨエー ツエケ 「強かった」;山形県庄内地方特に北部飽海郡の若い世代で増加中;以前はツヨガッタ,またはツエガッタ(地平p.125,井上1994,国語研1974b) ツエッケ 「強かった」;山形県庄内地方の若い世代ことに南部鶴岡市で増加中;以前はツヨガッタ,またはツエガッタ;国立国語研の戦後の調査で,40年にわたる変化が分かる(地平p.125,井上1994,国語研1974b);→ツヨイッケ,ッケ,ケ 井上1996.3:18 ツエデ 「連れて」;新日p.146; 〜ッカ 「〜うか」;東京での長音の促音化;カの前で起こる;「マ,イッカ」「ア,ソッカ」「ジャ,イコッカ」など,間投詞の短音化と連動することが多い;→ソッカ,イコッカ,イッカ ツカミオニ 「鬼ごっこ」;新乱p.277 ツカミッコ 「鬼ごっこ」;新乱p.277 〜ッキャナイ 「しかない」;東京都(山敷1982);伊豆半島中年以下(永瀬1990a);新日p.279;→ソースルッキャナイ 〜ッケ 「た」;鶴岡で,形容詞過去形につく;老人の方言のオッキガッタ(大きかった)からオッキケ→オッキッケと変化した;動詞についた「クルケ/キタケ」では回想/伝聞の意味になるが,形容詞では過去を意味する;「強かった」は鶴岡でツエッケ,酒田でツエケが進出中(井上1991,1994) 〜ッケ 「だった」(回想);静岡県ではミタッタ,イッタッタのように言っていたが,最近の若い世代はミタッケ,イッタッケのようにいう(山口1982);浜松付近では疑問詞と呼応するときだけ使う点,「どこへ行ったっけか」などという点,「共通語の中途半端な習得」という(山口1994);「昔は沢山イタッケ」など,愛知県で増加(江端1990);広島市で若い世代ほど多く使う;20代で76%,40代は40%(小林他1996);Q p.220;→行クッケ 井上1996.3:18 〜ッケ 「から」;酸っぱいッケ,ダッケなど;元はスッパイスケ,ダスケ;新潟県(大橋1988) 〜ッケ 「〜たら」;「バスからおりたっけ,母がいて・・・・」;北海道(小野1987);→シタッケ 〜ッショ 北海道弁として有名になった;ラーメン「うまいっしょ」が典型;漫画やテレビドラマでも活用される;茨城県日立市の子どもも使うとか(学生報告);千葉県木更津では,北海道から集団移住した子供たちから広がったと認められる(清水1996);北海道では促音を失ったショとも言われる;→イイッショ,イッショ,ショ 〜ッス 「です」;「どうしたんスか」「ないスか」「やばいっスよ」以外に「行くっス」のように動詞の終止形に付くようになった;マンガに見られる(杉浦1995) 〜ッチ 「なんか」;「数学なんか嫌いだ」などのナンカをッチという;福岡県小倉の若者に出現(陣内1993:104,119);→ゲナ 〜ッチャ 「(雨だ)ってば」「(当り前)じゃないか」;福岡県小倉の若者に増加;ッテバから生じた(陣内1993:102,108,110);→チャ,ガッチャ 〜ッチャイ 「〜たい」;山形県南部長井付近では,ラ行5段動詞のッチャイが他のすべての動詞に拡大した(地平p.96);ノミッチャイ/カギッチャイなど;福島県で盛んな動詞のラ行音の拗音化と関係する;→見ッチャイ,ニ ツッチ(ク) 「連れて(行く)」;新乱p.312 〜ッツッタッテ 「と言っても」;元はッテイッタッテ;鶴岡(口頭報告) 〜ッツッテモ 「と言っても」;元はッテイッテモ;鶴岡(口頭報告);東京都(東京都1986) 〜ッテ →ソレッテ つば →シタッペ 最上p.9〜 ツッパネ 「泥はね」;最上p.176 新日p.208 ツッパリ 「泥はね」;最上p.176 新日p.208 〜ッペ 「よう」;新日p.200;→ミッペ 〜ッポイ 「〜のようだ,〜みたいだ」;首都圏の若い世代で盛んに使われる(中野1986);「バカッポイ」「遊んでるっぽい」「間に合わないっぽい」など,文につくようになり(小川1994),助動詞と見なされる;伊豆半島ではわずか(永瀬1990a);新日p.28;SFp.68;→行クッポイ,ダメッポイ ツマンナイ →ワカンナイ つむじ →ウズ,ウズマキ,マキメ ツュブリーン →チュブリーン ツヨイッケ 「強かった」;山形県庄内地方の若い世代ことに南部鶴岡市で増加中;新方言としてのツエッケを共通語化させて作った形(井上1994);→ツエッケ 連れて(行く) 新乱p.312〜 →ツッチ(グ) テ 〜デ 「ぜ」;佐藤1993a:110 〜テアゲル 「〜てやる」;アゲルの補助動詞としての用法が広がった;「二の腕・・・・だけでも毎日ケアしてあげたい」(Camcan 1994.6)「素肌をさっぱりさせてあげる」(Camcan 1994.6)「この動詞を活用してアゲルと」(口頭報告1994)など;擬人化用法とも,使役/他動の意味を強調するためとも解釈できる;以前はヤルとは言わなかった文脈場面で;敬意逓減の法則による;またヤルの卑語的ニュアンスのため避けられたか;→アゲル デアル 「そうだ」;沖縄で,方言のヤン/ヤサを直訳した言い方(本永1979);→ダアル T字路 井上1996.3:22 〜ディヤ 「(何)だい」;佐藤1993a:210,1993b デーラー 「大変」;愛知若者(口頭報告);→ドラ,ダラ デーレー 「大変」;ドエライから変化;愛知/岐阜の中年以下に散在(Q p.200);岐阜県大垣で(学生レポート1994.10) 〜テオク 「ている」;西日本一帯(高橋他1996);→スワッテオク,ノコッテオク デカイ 「大きい」;福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:33);北部九州の都市部の若年層の大部分に波及(陣内1995,1996);→デッカイ 〜テカッ 「てから」;老人はテカラ,テカル;熊本(吉岡6) テゲ/テゲー 「大変」;宮崎県(熊本大レポート);→タイガイ デコ 「額」;北海道奥尻島の若年層が使う;老年層はナズキなど(小野1980);→オデコ です 井上1995.12,1996.3:25 テスヨ 「そうですね(あいづち)」;鹿児島市の若者,ジャッドの訳(木部1995);→ダヨー,ダッタ デタン 「大変」;若松/八幡地区のみ(岡野1988b);北九州市八幡;飯塚市(熊本大レポート);北九州市西部(陣内1996) デチャン 「大変」;若松/八幡地区のみ(岡野1988b) デッカイ 「大きい」;房総南端では中年層以下で増加中(昭和1994);新乱p.310;Q p.79;→デカイ テッカリ 「凍雪/圧雪」;山形県鶴岡市では,若者はテッカリを「凍った雪道」(アイスバーン)の意味で使う;中年以上は「凍った雪道」をキンカと言い,テッカリは「斜視」のことだったから,一世代で意味がずれた;新日p.161;1978年の鶴岡の高校生で一時増えたが,1988年には再び減少;はかない運命の新方言だった;もとは鶴岡でキンカ,酒田でテガだった(井上1994);→テンカ デッケ 「大きい」;山形県の若い世代がいう;都市部では中年も;老人はオッキ(井上1994);似た変化は全国で起こっており,デカイ/デッカイは老人では中部/関東地方の方言だったが,今は関西にも進出中;LAJで,東日本の主要交通路ぞいに伝播するさまが読み取れたが,今も続いて進行中とみてよい(新日p.167) デナパンク 「おでこ」;以前はデナ;福島県(加藤他1988:75) 〜テヘン 「〜てない」;徳島(講座);→ナッテヘン テマッタ 井上1996.3:10 テモタ 井上1996.3:10 デモ 「けれども」;→ヨムデモ,ンデモ 〜テヤ 「というものは」;愛知県海岸部の若年層(江端1985) デラ 井上1996.3:6 デライネ 「出られない(状況可能)」;山形県庄内の若い世代で;語源はデラレナイ;レのr脱落の形で,以前はデラエネと発音されていたが,連母音でアエがアイに変化してできた(井上1994);→オヨガイネ デラン 「出ない」;五段活用動詞に変わろうとしている;下関市若者(岡野1985b);壱岐/対馬の若(講座) デリー 「出なさい」;下関市/北九州市の若年層(岡野1992b) デレ 「出ろ」;壱岐/対馬の若(講座) テレコ 「テープレコーダー」;新資p.243,374 テレホン 「有線放送電話」;壱岐(柴田1988) デレル 「出られる」;新日p.259;東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル デロー 「出よう」;壱岐/対馬の若(講座) テンカ 「凍雪/圧雪」;1978年の庄内の高校生で一時増えたが,1988年には再び減少;はかない運命の新方言だった;もとは鶴岡でキンカ,酒田でテガだった(井上1994);→テッカリ 天下取り →ガンバコ 井上1996.3:7 ト 〜ト 「の(準体助詞)」;福岡県若年層で上につく品詞の範囲が広がり,動詞形容詞以外に,「あの人マジメと?」「ダメト」「スキト」「明日休みと?」「病気ト」などのようにまず形容動詞に,次に名詞にもつくようになった(陣内1991、楢田1992) 〜トッテ 「のだよ(強調表現)」;福岡県若年層で「あの人変なかったとって」のように使われるようになった(楢田1992) 東京語化 東京の口語的/俗語的表現が全国に広がりつつある現象(井上);→東京弁化 東京新方言 東京で広がりつつある口語的新表現(地平);関東では(東京新方言でもある)東京型の新方言は広い範囲で勢力を保ち,拡大し,勢力の限定された地方型の新方言と対照的である(佐藤高1994) 東京弁化 東京の口語的/俗語的表現が全国に広がりつつある現象(陣内);→東京語化 〜トー 「ている(進行態)」;元は(フッ)トル;神戸市付近の中年以下(真田1993);神戸付近中年以下と徳島県にキエトルに代わってキエトーが普及(友定1994);北九州市域の女生徒/女子学生が「行ットーヨ」「シトーヨ」のようにルを言わなくなっている;博多あたりと同様(岡野私信1994);博多若年層の「腐っトウもん」の用例あり(坪内1991);ローカル版ラップ「ソータイ」(1995)でも現れる 〜トー(ドー) 「た(過去の助動詞)」;山梨県西部ではもとから;東部の若い世代が使いはじめる;聞イトー,読ンドーなど(吉田1994) トーイー 「遠い」;神奈川県東部で普及中;隣の静岡県西部では古方言的な分布を示している;Q p.36;→オーイー トーナ 「とうもろこし」;中年以上はトーナワ;富山県五箇山中流域で増加傾向(真田1990:298、工藤他1993) ドーンリ 「どーんと(ぶつかった)」;栃木県南部の若い人は,「〜と言ってた」の引用の「と」も,「り」と発音する;シッカリ,シッカト,ヒヤリ,ヒヤットのようにリとトが交代するための変化だろう;新日p.16,46 →リ トカ 「なんか」;「勉強トカダイキライ」;下関市/北九州市の高校生;「トカ弁」は関門域では北九州市から広がった(岡野1991,1996a) 〜ドコー 「(食べない)でおこう」;博多で(陣内1993:73,87);「するまい」を「センドコー」というものが関門域の高校生にいる(岡野1996a) どこかに 新乱p.302;→ドッカサ,ドッガサ ドッカサ 「どこかに」;山形県庄内地方ではもとはドサガ;若い世代ではドッカという形を取り入れ,また方向を示す助詞を最後にするという共通語の語順は受け入れたが,助詞のサの形は保った(井上1994);→ハ,サ,ミサ ドッガサ 「どこかに」;新乱p.303 ドッコイ 「じゃんけん」;「ジャイケン ドッコイシ」のように使う;小倉の若い層(陣内1993:52,1996);→ジャイケンシ〜 ドッピン 井上1996.3:7 ドッペ 「びり」;最上p.176 新日p.208 ドハ 「どこに」;鶴岡の若い世代のほんの一部が「ドハ/ドゴハ(どこへ)」のように使う(井上1994,新日p.16,161);→ハ とびはねイントネーション 「かわいくない?」などのアクセントの高い部分が最後まで続いて最後が高くなる調子;「〜ナイ」がアクセント単位として直前の形容詞と一つになったのが一因;東京語アクセントの付与単位は,長い歴史の流れでだんだん長くなって,2文節以上をひとまとめに発音する傾向が見られる(トルデショウなど);また形容詞アクセントの一型化が進んで「厚く」「熱く」などの区別がなくなったためでもある;文末に現れるが,理論的にはイントネーションの問題ではない;首都圏西部から,一帯の若い女性に広がりつつある(田中1993b);→形容詞アクセントの一型化 ドブス 「下水の溝」;金沢で,共通語のドブに引きずられてできた;元はドボスだったらしい(北国1995) ドラ 「大変」;「ドラウマ」など;愛知小学生(口頭報告);→デーラー トリノコヨーシ 「模造紙」;香川付近(小林他1996);→ビーシ,タイヨーシ 〜トル 「ている」;福岡県では進行態にもヨルでなくトルを使用する者が出ている(陣内1993:72);高知県;大分県では以前は完了態はチョルだったが,隣接の方言から西日本的な方言トルが入ってきた(日高1994) トレー 「とろい;のろい」;熊本(吉岡1) トロイ 新資p.168〜,246,408/東神p.90/新日p.10;東海p.129,130 泥ハネ →ツッパネ,ツッパリ 最上p.175 ドロボーケズリ 「鉛筆の両端を削ること」;愛知県/岐阜県付近の若い世代の新方言;他地方ではビンボーケズリ/コジキケズリ/チョーセンケズリなどともいうが,何も特別に名をつけないところも多い;近代の名付け;風景p.118;Qp.178 ドンクサイ 江戸時代以来の上方語をABC朝日放送「ラブアタック!」で司会者が使って全国に広げた(松本1992);東神p.91 ドンケ 「びり」;最上p.176 ナ ナーン 「何も,別に」;金沢の若い世代が返答で使う;元はナモ/ナーモ/ナーンモ/ナームなど(北国1995) 〜ナーバ 「ならば」;山形県酒田付近の若い世代で「スルナーバ」のような表現が増加;もとはスンナダバ(井上1994);→アンバ,アンダバ 〜ナイ 「〜なさい」;西頚城(講座) ナイイ 「ナウい」;大分の若年層が方言風に翻訳して使用(日高1994);→ナウッチイ ナイッケ 「なかった」;静岡県本川根町の若年層で増加,本来の言い方はナカッケ(中條1981);→〜ケ ナイデシタ 「なかったです」;鹿児島の地方共通語;ナカゴアシタの訳(木部1995);→ナカッタデシタ 〜ナイデシマッタ 「(昨日は)〜ないで終わった」;東北,北関東(高橋他1996);→イカナイデシマッタ ナイナル 「なくなる」;元はノーナル;高知/愛媛の若年層(高橋1991) ナイヤロー 「ないだろう/あるまい」;元はナカルマー,ナカロー;下関市/北九州市(岡野1991) ナウイ 新資p.172〜,246,405/東神p.64 /新乱p.315,東海p.131 ナウッチイ 「ナウい」;大分の若年層が使用(日高1994);→ナイイ ナガーニ(ン)ナル 「長くなる」;元はナゴーニ(ン)ナル;徳島山間部(講座) 〜ナカッタ →元気ナカッタ ナカッタデシタ 「なかったです」;鹿児島の地方共通語(木部1995);→ナイデシタ ナガッチョロイ 「長い」;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→カバイ ナカマ 「親友」;(新潟大レポート1992) 〜ナキャ 「なければ」;東京では「〜ナケリャ」に比べると新しい言い方(都竹1943);東京都(国広他1984);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:33) なくさない →ネグサネ 最上p.179 〜ナクチャ 「なければ」;東京都(国広他1984);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:33) 〜ナケリャ 「なければ」;東京都(国広他1984) 〜なければならない →アルカナ,アルカナンダラ,アルカント,アルカンニャ,イカナキャダカラ,イカナキャナイ,ナキャ,ナケリャ,ナクチャ ナゲレル 「投げることができる」;岐阜〜神奈川では老人も使うが,滋賀県では20代以下,京阪神では50代以下に普及中(Q p.126);東京都(国広他1984) ナスビ 「茄子」;中学生の全国調査では,本来使わなかった東日本各地に使用者が出ている;ナスとの併用だが,なぜ東に進出したか不明(井上1995.1,1995.2) ナツカシャー 「なつかしい」;熊本(吉岡4) 鳴ッテヘン 「鳴ってない」;徳島(講座) ナニゲニ 「何気なく」;首都圏の若者の一部が最近言う;発生理由はいくつか考えられる;@ケナゲ/オボロゲなど〜ゲニという活用をとることば(形容動詞)があることの類推とも考えられる;A惜シゲニ/ウレシゲニ,クルシゲニなど,一部の形容詞(多くはもとのシク活用に属し,感情/感覚などを意味するもの)は規則的に〜ゲニという形をとり,さらに進んでキラクゲニのように一部の形容動詞にも規則的に〜ゲニが付くようになったので,本来形容詞と関係ないナニにも〜ゲニがついて,ナニゲニという語が作られたと考えられる;Bまた「せわしない=せわしい」のように「ない」が無意味に使われることがあるので,「なく」が取れて,他の副詞と同じ「に」がついたとも考えられる(井上1993b);「ナニゲデ,ナニゲノツモリ」とも;「ありげに」の逆(中野1986);→サリゲニ 〜ナハズダ 「(ここが入口)なはずだ」;伊豆半島散在(永瀬1990a);新資p.200〜,249,436 〜ナ話シ 新資p.198〜,249,435 ナバ 「大変」;ナバンゴツ(大変)の短縮;熊本(熊本大レポート) ナバアクシャ →アクシャウツ ナバヒー 「大変」;熊本(熊本大レポート) 〜ナフ 「なさる(敬語辞)」;京都府福知山市付近のこどもがいう(中井1992) 怠け者 →ヘヤミ 最上p.180 ナマラ 「大変」;北海道の若者(石垣1983);新潟市の若者も同じ意味で使うことがある;ただし新潟市近郊三島郡の老人が「だいたい,半ば」の意味で使うので,その影響も考えられる(新潟大レポート1992); 井上1996.3:6 ナメヨン 「なめくじ」;元はナメラックジ;群馬県六合村(篠木/中条1991) ナユイ 「ナウイ」;新資p.174〜,246 〜ナヨ 「ねえ」;栃木県足利付近の若い男子に多かった(多々良1956);→ネーヨ 〜なら →(安イ)ナラ/キレイナラ ナルビー 井上1996.3:3 ナンギクナイ 「難儀でない」;沖縄で児童生徒が使う(本永1979) ナンコ 「いくつ」;北九州市若年層(岡野1985a);宮津市(国語研1988);風景p.82 ナンボ 「いくら,いくつ」;北海道都市部で増加(1988,小野1992) ニ 〜ニ 「〜ない」;福島県などで,(re)naiが/nje/を経て変化;ニェ/nje/は音韻体系からいって位置づけの難しい発音だったので,もっとありふれたニ/ni/に置き換えた;→クンニ,キランニ,クワンニ;福島県(講座);新日;→チ ニギヤカカッタ 「にぎやかだった」;元はニギヤカニアッタ;山口県(岡野1981) ニゲレル 「逃げることができる」;新資p.245,396/新日p.282;東京都(国広他1984)→食ベレル,ラ抜き言葉,〜レル ニラネー 「煮ない」;渡島半島南部の生徒(舟越1970);→ラ行五段化 ニレル 「煮ることができる」;東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉,〜レル 〜ニヤ 「ねー」;山形県最上地方;最上p.134,174 新乱p.314;新日p.208;→ネェ 〜ニャー 「ねー」;元はネヤ;山形県内陸地方;ニヤを経てニャーが増加中(最上p.134,174);新乱p.314 新日p.208;→ネェ ヌ ヌクタ 「暖かく」;知多半島の若年層採用,老人はヌクトー(江端1987);→ウ音便 ヌシャ 「おまえは」;熊本(熊本大レポート) ネ 〜ネェ 「ねー」;新乱p.314;→ニャー 〜ネーヨ 「ねえ」;栃木県足利付近の若い女子に多かった(多々良1956);→ナヨ ネグサネ 「なくさない」;庄内の若い世代でナグサネに代わって普及;形容詞無活用化の一環(井上1994);新日p.217 最上p.110,170,179; ネクラ 新資p.244,382 ネッパル 「ねばる」;北海道都市部で増加(小野1988,1992) ネラン 「寝ない」;福岡市若者の大部分(陣内1983);→五段化 ネレナイ 「寝られない」;福岡県の若者の一部のみ(陣内1993:50) ネレル 「寝られる」;東京都(国広他1984)→ラ抜き言葉,〜レル ネレン 「寝られない」;福岡県の若者に増加;状況可能と能力可能の区別がなくなった(陣内1993:73,84);→イケン ネロー 「寝よう」;老人はニョー;瀬戸内沿岸(室山1977);→五段化 年目 井上1996.3:4 ノ ノコッテオク 「残っている」;西日本一帯(高橋他1996);→スワッテオク,〜テオク ノッカル 「乗る」;新資p.244,387 ノッケル 「載せる」;東京都と近辺では青年層使用率が100%近くに増え,標準語と思っている人も多い;定義上新方言ではないが,言及しておく;関東方言が文体的に上昇したととらえうる(田中他1994) ノッタイ 「乗りたい」;新乱p.291 ノッチ(イ) 「乗りたい」;福島市付近で普及中;SFp.72 ノッチャイ 「乗りたい」;新乱p.291;→見ッチャイ ノビラネー 「延びない」;渡島半島南部の生徒 (舟越1970);→ラ行五段化 ノマント 「飲まないで」;新資p.63,128〜 飲みたい →ノミッテァ 最上p.178 →ノミッチャイ,ノムダイ 新乱p.291 ノミッチャイ 「飲みたい」;新乱p.291 ノミッテ 「飲みたい」;最上p.97,169 新日p.216 ノミッテァ 「飲みたい」;最上p.178 ノムダイ 「飲みたい」;新乱p.291 ノメラレル 「飲める」;伊豆半島散在(永瀬1990a);新日p.281,282;→飲メレル ノメレル 正しい日本語は「飲める」;東京でも若い世代に使う人がいる;「見られる/食べられる/逃げられる」を見レル/食ベレル/逃ゲレルという傾向を進めたもの;静岡や高知/札幌でも言う;新資p.126〜,245,398/新日p.281,282;伊豆半島老人も(永瀬1990a) 乗りたい 新乱p.291 →ノッタイ,ノッチャイ ノリッチャイ 「乗りたい」;新乱p.291;→見ッチャイ ハ 〜ハ 「へ(格助詞)」;東北方言の方向を示す格助詞サの子音の弱化によって生じた新形;鶴岡の若い世代のほんの一部が「学校ハ」「ドハ/ドゴハ(どこへ)」のように使う(井上1994);→ドハ 〜バーテー 間投助詞;中高生が使う;「バイトが忙しいバーテー」「たまには勉強するバーテー」など(沖縄1989) バーテーことば 「沖縄の若者の新方言」;バーテーをよく使うことから(野原1993);→ウチナーヤマトゥグチ ハインナ 「入りな」;佐藤1993a:57,1993b ハエー 「早い」;房総南端の中学生では半数近くが使用,老人はハイェーまたはハヤー(昭和1994);東京でもアイ連母音の融合が単純化してイェの発音が無くなった;→ツエー/ヨエー ハガイー 「にくたらしい」;今の娘たちがハゴサーを少し標準語化して使う;奄美(恵原1987);奄美で1960年代の女の子が「じれったい」などの意味で使用,元はハグサ(倉井1987);→ハグイ 〜バカシ 「ばかり」;東京都(国広他1984)→ヤッパシ ハク 「身につける」;ハチュンを共通語化して;ジャケット,ネクタイ,メガネなどにもハクを使う;沖縄県の高校生(儀間1987) ハグイ 「じれったい」;奄美で1960年代の男の子が使用,元はハグサ(倉井1987);→ハガイー バクル 「交換する」;北海道の若者に力強く使われている;東京で通じなくて「チェンジして」と言い換えて分かってもらえたとか;もともと東日本各地の方言で,「博労」を動詞にしたものだった;(小野1992) ハゴイ 「汚い」;沖縄口のハゴーサンを間違ってまたはわざと大和口化して言った(儀間1987);→地方共通語 〜ハズ 「だろう(推量表現)」;沖縄県の新方言で「タカイハズ,メズラシイハズ」などという(永田1991);奄美で1960年代の女生徒が使用,「ソウハズ」など(倉井1987);→ダハズ 〜バッカ 「ばかり」;下関市/北九州市若年層の一部(岡野1991);房総南端の中学生では約半数が使用,老人はバーリ(昭和1994) ハッガーイ 「はがゆい」;金沢の若者(北国1995);→ハンゲー 〜バッカシ 「ばかり」;房総南端の中学生の一部が使用,老人はバーリ(昭和1994);東京都(国広他1984);→ヤッパシ ハッゲー 「はがゆい」;金沢の若者(北国1995) バッチカ 「汚い」;長崎県(熊本大レポート) 〜バッテン 元は〜イドン;熊本県球磨郡(講座) ハデイ →元気イ,イ語尾 ハデク 「派手に」;博多の若者に増加(陣内1993:75,96) ハデヤッタ →ヤッタ ハデヤロー →ヤロー ハナシガピーマン 新乱p.315 ハバ 「かっこいい,とても」;那覇の70年代の少年少女が使った;最近はバリ(まぶい組1989) ハマツキ 「補助輪付き(自転車)」;鹿児島(小林他1996);→コマツキ,ハマツキ ハヤイデ 「速くて」;福岡県小倉の若者に増加(陣内1993:76,100) ハヤナル 「早くなる」;香川/愛媛の若年層(高橋1991) ハヨナル 「早くなる」;香川/愛媛/高知西南部の若年層(高橋1991) 腹が立つ 新乱p.313 →アダマサクル バラ 「とげ」;北海道(講座) バリ 「大変」;山口県の一部の若年層(岡野1988b,1996a);長崎県(熊本大レポート);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:65);福岡県では1980年代初めに中学/高校生に広がった;山口県出身のパーソナリティーから広がったという(楢田1992);沖縄県では1989年頃「すごい,とても,かっこいい」の意味で小中学生が使う;かつてはハバを使った(まぶい組1989,野原1994:51);大学生では近畿はじめ西日本各地で使用(永瀬1995); 井上1996.3:6 バリアクシャ →アクシャウツ バリカク 「ひっかく」;岐阜県中津川で増加(永瀬1990b) ハルイ 「晴れる」;対馬つつ村で大人のハレルなどルで終わる動詞をイに変えた(金田一1977);→フイ,〜イ ハワク 「掃く」;元ハクを使っていた下関市に北九州市から進出(岡野1991) パンキー 「めんこ」;愛知県豊橋付近で広がったが,10代はメンコを採用;Q p.64 半クエスチョン 井上1996.3:23 ハンゲー 「はがゆい」;金沢の若者が元のハガヤシイを変化させていう(北国1995);→ハンゲシイ,ハッガーイ ハンゲシー 「はがゆい」;金沢の若者(北国1995);→ハンゲー ヒ ビーシ 「模造紙(B判全紙大だから)」;東海地方で(Q);愛知/岐阜/三重(井上1996.3:3,高橋他1996);愛知と岐阜(小林他1996);→ビーゼン,トリノコヨーシ,タイヨーシ ビーゼン 「模造紙(B判全紙大だから)」;愛知県半田市(学生報告1994);→ビーシ ヒガネ 「引かない」;最上p.179/新日p.162;→キガネ ヒグルイ 「寒い」;元のヒグルサから;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→ヒスイ ヒスイ 「薄い」;元のヒッサから;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987);→カバイ 鼻濁音 →ガ行音 ビックリビッタ 「驚く」;壱岐若年層(友定1994b) ビッケ 「びり」;10年後に変動;佐藤1993a:198,1993b ピッタシ 「ぴったり」;東京都(国広他1984);千葉県市原市(藤原1979);新資p.188〜,247,416;SFp.63 東海p.134;→ヤッパシ ビビル 「おじける」;以前は関西で使われていたが,今は東京はじめ全国に広がった(新資p.94〜,244,391〜,東海p.123,124);語頭のビの音に引かれて「びっくりする」の意味に使われることもある;古くからの関西弁として方言集に収録されているが,意味は「ちびる」「けちけちする」「迷う」「音が振動する」など様々だった(前田1965,木村1983);もともと,旋盤などの機械が振動する意味でも使われていた;伊豆半島中年以下使用(永瀬1990a);壱岐若年層(友定1994b) ヒメクラオニ 「鬼ごっこ」;最上p.175 ヒャー(タレ) 「役立たない/つまらない(人)」;熊本(熊本大レポート) ヒョーニャー 「変な」;熊本(熊本大レポート) びり →ゲッピ,ゲッペ,ゲビ,ゲレッパ,ドッペ,ドンケ,ビリ(ッ)ケ(ッ)ツ,ブッケ,ベベ ビリケツ 「びり」;最上地方で;新日p.208 ビリ(ッ)ケ(ッ)ツ 「びり」;新乱p.278 〜ヒン 「〜ない」;京都府北部の青年層にミーヒンが普及中(加藤1988);京阪神では上1段動詞など語幹がiのときにヘンからヒンに変化した(奈良県では全動詞にヒンが付く);ミーヒン/キーヒンなど(日高1994z) 〜ヒンカッタ 「〜なかった」;ミーヒンカッタが大阪〜岡山の中年以下に普及(真田1993) ピンクイ 「ピンクの,桃色の」;博多の少年層の一部が使う(陣内1993:46);→イ語尾 ビンタ 新伝p.86/新資p.98〜,243,377/東神p.47→ピンタ ピンタ 「びんた」;都区内から神奈川県/東京都下の若者に拡大中;「ピ」の方が音がぴったりなのだそうだ;軍隊で「びんたを張る」というのは,鹿児島弁のビンタ=「頭」から転じたといわれる;新伝p.86/新資p.98〜,243,377/東神p.47/新日p.281,282;東海p.116 ヒンデー 「ひどい」;鶴岡;昔はヒデー(口頭報告) ビンボーケズリ →ドロボーケズリ ビンボコ 「肩車」;ビンビクから変化;新日p.46 ピンポン 井上1996.3:7 フ フインキ 「雰囲気」;北海道,熊本,新潟;四国各地に点在(高橋1986b,高橋1996);他,多分全国の若者 フカイベー 南に広がる(飯豊1975);→ベー フク →タバコオフク フク(服のアクセント) 広島県の若年層で尾高(2)から頭高(1)に変化(馬瀬他1995)→ クツ 婦交サン 「婦人交通警察官」;京都(柴田1988) ブチ 「大変」;下関市の若年層が使うが(岡野1992a),北九州市には広がっていない;「打ち言う」などの強調の接頭辞が副詞に転用されたか(岡野1996a);山口県で増加(藤田他1990);広島/岡山に普及(高橋1986b); 井上1996.3:6 →ブリ,バリ ブチクソ 「大変」;下関市の若年層(岡野1992) ブッケ 「びり」;最上地方で;新日p.208 ブッケル 「ぶつける」;もともとはブツケル;鶴岡の高校生がいう(1992);山形県/全国の方言辞典にないから,鶴岡で生まれたものと思われる ブッコワレタ 「こわれた」;最上p.177/新乱p.281; フッタッチーヤ 「降ったそうだ」;老人はフラッチーヤ;八丈島末吉の若者(国語研1985:249) フッタラ 「降れば」;関西から広がった言い方;『方言文法全国地図』にも出ている歴史的拡大傾向;元はフリャー;広島(講座);→タラ ブッチギル 「サボる,約束をすっぽかす;ブッチする;」;熊本(熊本大レポート) 降らない →フンネ 最上p.179/新乱p.287 →ワカンネ フムン 「踏む」;40代の人の使う沖縄口で;本来はクンピーン(儀間1987) ブリ 「大変」;山口県の一部の若年層(藤田他1990,岡野1988b,1996a) ブリッコ 新資p.108〜,241,347〜 ブリッコ発音 若い女性は,アの母音を英語のcat,mapの母音に近く発音する傾向がある;甘えた感じに聞こえるように;またシの子音を,英語のsheではなく,seeやseaの子音に近く発音する傾向がある;英語の発音の不得手な子に多い傾向が見られる;使い分けが不十分なために英語の干渉を受けたと解しうる;シの子音については,関東以外に九州で[s]的に発音するが,老人が古いシェをセに直そうという努力が,シにまで及んだものだろうか;(新伝127f);なおフィンランド語でもヘルシンキ付近の狭い範囲の若い女性の間に甘えたような母音の発音が広がっているとのこと(口頭報告1994) フリユー 「降りつつある」;高知で老人も使うが中学生で使用範囲拡大(高橋1996) フンナイ 「降らない」;SFp.21,Q p.110 フンネ 「降らない」;山形県庄内地方で増加中;ワガンネよりは遅れている(井上1994);最上p179/新乱p.287/新日p.255,217;SFp.21;→ワガンネ ヘ 〜ヘ 推量の助動詞「う」;→行クンダヘ 〜ベー 推量の助動詞「う」;東日本各地で接続が単純化;「フカイベー」のような形が山形/宮城から福島北部/会津に分布しているが,南に広がりつつある(飯豊1975);神奈川全県で若い世代は形容詞終止形に直接続く(日野1959a,1959b);神奈川県で,犬ダンベー→犬ダベー,カッタルカンベー→カッタルイベー(井上1985,1995.4,日野1984,田中1991);井上1996.3:17 仙台では「おもしろいべー(面白いぞ)」のような,本来の意志/推量でない終助詞的用法が出た(小林他1996) 〜ペ 推量の助動詞「う」;→ミッペ 平板アクセント 井上1996.3:20 ヘーチャラ 「平気」;北海道の若者(石垣1983) ヘクル 「失敗する」;高知の若年層に急増(高橋1986b) ペケ 埼玉県では「びり」の意味で使う;埼玉の女子高生の使用率75%前後;最近東京でも使われる;なお関西では×印を,バツと読まずにペケと言う;江戸時代に「不可」の中国音から入ったという;伊豆半島散在(永瀬1990a);新資p.36〜,239,302〜 佐藤1993a:87,1993b ヘタイ 「下手だ」;福岡市若者の大部分(陣内1983);→元気イ,イ語尾 ペッカン 佐藤1993a:192 ベッタ 「びり」;大阪府(泉南市1994);大阪府南部の中年以下(熊取町1984);→ベベ,ベベタ ベッチー/ベベッチー 「汚い」;熊本県(熊本大レポート) 別ナ話シ →〜ナ話シ 新資p.198〜,249,435 ベベ 「びり」;ビリが全国の若い世代に広がっているが,京阪神各地の若い世代には,ベベの使用者が増えている;京阪神の老人はベッタ/ベッタコ/ドンケツ/ベベタなど様々に言っていた;東海道の他地域ではビリが急速に普及中で,新方言が生まれる勢いは見られない;(熊取町1984,泉南市1991、1994);Q p.65 ベベタ 「びり」;大阪府南部の10代の一部が併用で(熊取町1984);→ベベ,ベッタ ヘヤミ 「怠け者」;最上p.180 ベロ 「舌」;東日本から関西各地に普及(真田1990);大阪徳島間の10代に点々と使用者がいる(友定1994);新日p.257 新資p.88〜,243,375 〜ヘン →カケヘン,シチャーヘン 〜ヘンカッタ 「〜なかった」;コラレヘンカッタなど;大阪府泉南市(泉南市1991);イカヘンカッタ/セーヘンカッタ/コーヘンカッタが大阪〜岡山の中年以下に普及(真田1991,1993) ヘンナイ 「変だ」;福岡市若年層で出現(陣内1985,1989、1996);熊本(吉岡1,吉岡1990,1992,秋山他1991:219,小林他1996);→元気イ ヘンニャー 「変だ」;熊本市付近の若者;熊本の老人はヒョーナカ;熊本(吉岡1,吉岡1990,1992,1993,秋山他1991:219,小林他1996) ホ 〜ホ 「〜の」;もとは「コレデエーソ」のようにソ;山口県沿岸部の若い女性で増加(岡野1996c) 〜ポイ 新資p.182〜,247,413/東神p.85;→ッポイ,イクッポイ,ダメッポイ ホイデ 「そして」;瀬戸内沿岸で増加(室山1977);佐藤1993a:99 ホウカ 「休み時間」;放課;愛知県付近(高橋他1996,Q) ボーイ 「大きい」;共通語形容詞語尾イと方言形ボーキャの混交;八丈島(国語研1985:249) ポーンラ 「ポーンと」;群馬県東部(佐藤1993a:126,1993b,1994)→ラ ポーンリ 「ポーンと」;群馬県東部(佐藤1993a:122,1993b)→リ ホカス 「捨てる」;奈良県南部で老人ではホル/ホカスが拮抗;若者でホカスの方が多くなる(真田1996);日本言語地図の段階でもホカスが近畿中央部にあり,近代の進出を示していた ホシタラ 「そしたら」;徳島県でホタラなどに代わってホシタラが普及中(友定1994) ホタルグサ 「スギナ」;長野市近郊の農村の子ども使用;隣村からの流入(馬瀬1963) ボックー 「いたずら小僧」;静岡県西部(山田他1992) ボッコ 「こぶ」;風景p.81;山形(講座);→モッコ ボッコワレタ 「こわれた」;栃木県南部で;新乱p.281;SFp.4;→ブッコワレタ,コワレタ ホメラッタ 「ほめられた」;最上p.177 ほめられた →ホメラッタ 最上p.177 ホラシャ 「うれしい」;ホコラサ「誇らしさ」のなまったもの;明治にはフクラシャといった;奄美(恵原1987) ボロカ 「粗末な」;佐賀市(熊本大レポート) ホンデ 「そして」;大阪徳島間でホシテなどに代わってホンデが普及,今は大多数(友定1994);近畿(室山1977);佐藤1993a:99 ボンナイフ 「かみそりの刃の入ったナイフ」;東京付近のみでいう;近畿ではナルビー;ともに商標名から;ただし1980年ころの言い方で,1990年代には実物が消えたも同然;類似品に回転式の「ドイツ削り」があるが,名称の地域差は不明;東京都(山敷1982);伊豆半島わずか(永瀬1990a);新伝p.86/新資p.26〜,242,371/東神p.27/新日p.196,264,265;SFp.49;Q p.59 井上1996.3:3 ホンナラ 「そうしたら」;大分で若者に多い;元はホイタラ(高田1970) マ マーゴツ 「大変,非常に」;熊本の若者;老人の「(メノ)マウゴツ」から意味用法が変化したもの(吉岡1990) マーゴッ 「大変,非常に」;熊本(吉岡3);→マウゴツ マーナー 「きのぼりとかげ」;沖縄県コザ市戦後生まれで増加,元は(ハブ)アタカーなど(中松1976) 〜マイ 「〜よう」;愛知県の中年層はイコマイ(井上1995.4) 〜マイカ 「〜よう」;静岡県愛知県の老人はイカマイカ/ミマイカ/シマイカ;愛知県の中年以下はイコマイ/ミマイ/シマイ;(井上1995.4,Q p.146f);→〜ヨマイ マウゴツ 「大変」;「舞うごとく」「舞うように」から;熊本(熊本大レポート,陣内1996);(マーゴツは老人も使う);→マーゴツ,ウマンゴツ マキメ 「つむじ」;群馬県六合村(篠木/中条1991) マクド 「マクドナルド」の略;近畿地方;全国的にはマックが多い;→マック マジ 「まじめ」;房総南端の中学生では約半数が使用(昭和1994);東神p.94 マジチャリ 井上1996.3:5 マズッタ 「失敗した」;伊豆半島若者(永瀬1990a);新資p.245,393/東神p.77,SFp.64,東海p.125 間違いデスゥ? 井上1996.3:25 〜マッ 「ワルマッナ」(笑いますな);鹿児島(講座) マック 「マクドナルド」の略;中部地方以東,熊本;→マクド マッゴ 「大変,非常に」;大学生では熊本福岡で使用(永瀬1995);→マウゴツ 〜マッシ →ガンバリマッシ マッダ 「また」「まただますのだろう」;北海道の学生(石垣1983) マッツグ 「まっすぐ」;東神p.86 マツボックリ 「松笠」;中学生では日本全国でマツボックリが70%以上におきかわった(井上1995.1);マツカサにくらべると口語的な響きがあり,東京語化/東京弁化といえる;東海道沿線全体でマツカサからマツボックリにおきかわった(Q p.55);新潟県糸魚川市早川谷ではもともとのマツガサ/マツカサをおしのけて若者に普及中(徳川1993:352);大阪徳島間でも同様老人のマツカサから中年以下でマツボックリに変化(友定1994);東京都(東京都1986);愛知県瀬戸市(瀬戸市1990);大阪市(佐藤1989,泉南市1994);東海p.113;なお山梨県北都留郡では,逆に中年がマツボックリで若年層はマツカサに,「標準語」化している(成徳1992);となりの芝生がきれいに見えるたぐいか;類例にツバキ/ツバの文体的位置が東西日本で逆転している現象がある(真田) マブイ 「まぶしい」;壱岐若年層;関西の老人層のマブイの伝播ではなさそう(友定1994b); 井上1996.3:8 ママチャリ 井上1996.3:5 〜マン 「〜しなければならない」;熊本県芦北の若者;伝統的な方言では「着らんバン」(吉岡9) ミ ミーヒン 「見ない」;京都北部/兵庫(加藤1991);京都市でも比較的新しい(中井1992);→ヒン ミエル 「いらっしゃる」;「本を読んでみえる」を共通語と考えるのは椙山女学園大学100人の7割で,「先生がみえる」での8割とそう変わらない;近代に生まれた方言敬語が,方言と意識されにくい例(朝日1995) ミカンヲ好キダ (格助詞);新資p.206〜 ミサ 「見に」;新乱p.303;→サ ミサイク 「見に行く」;新資p.63,148〜 ミシテ 「見せて」;ミシテは,中年層でも関東はじめ日本各地で使われていたが,若者では全国に広がった;使役の言い方の「〜せる」が「て」につながるときに,「〜して」になるのに引かれたか;上方では古くからあった;セルを使役助動詞スと入れ換えてできた(前田1965);また「任せる/任して」などの古くからある不規則な活用形に影響されたものか;新資p.120〜,245,400/東神p.81/新日p.281,282;SFp.66;伊豆半島(永瀬1990a) ミシテクレ 東神p.81 →ミシテ ミズクレガカリ 「水やり係」;新潟長野群馬福島(高橋他1996) 水ヲホシイ →〜ヲホシイ 新資p.204〜,249,438 見たい →ミッテァ 最上p.178;→ミッチャイ,ミッタイ 新乱p.291 ミタク 「のように」;「女ミタク」のように使う;ミタイニからの変化;東北/北関東では昔からのことばで,北から東京に入ってきた;今は中年以下が使う;東京付近青年層使用率は50%近い;東海道沿線では神奈川静岡の20代以下に普及中;江戸時代から明治時代には「〜をみたようだ」「〜みたようだ」「〜をみたように」「〜みたように」といっていた;漱石などにも用例が見られる;その後「〜みたいだ」「〜みたいに」が生まれた;はじめは名詞のあとに使われ,のちに動詞/形容詞のあとに使われるようになった(いくみたいだ,いいみたいだ);文の最後で「だ」が省かれて,よく「(女)みたい」と言われるので,形容詞オモタイなど(また,ミ+願望の助動詞タイ)と同じと思われて,「ミタク」が生まれた;ピンクレディーの歌 Do your best (1979)で「イエスキリストみたくやさしく」と使われている;群馬の大学生の20〜60%近くが使い,「流行語」と意識(山県1988);佐藤1993a:72,1993b;東京都(山敷1982,東京都1986);神奈川県(田中1991);伊豆半島中年以下(永瀬1990a);大分県ではわずか(柴田1991);福岡県でも使用者ほとんどなし(陣内1993:36);新伝p.53/新資p48〜,240,315/新日p.9,21,27,33,46,257,258;SFp.34 語楽p.129 井上1996.3:11 ミチッタ 「見てしまった」;もともとは茨城県あたりの言い方だったが,最近東京の若者に広がった(荻野他1985);伊豆半島まれに若者が使う(永瀬1990a);新資p.245,399;→チッタ ミチョーニ 「みたいに」;佐藤1993a:185,1993b ミッキー 井上1996.3:3 ミッタ 「見ている」;新日p.165,217 最上p.91 ミッタイ 「見たい」;新日p.217,最上p.96,168,新乱p.291 ミッチャイ 「見たい」;山形県/福島県の県境地方では,老人のノリデ/ミデの「デ」に変わって「ッチャイ」という新方言が若い世代に広がっている;また山形県白鷹町付近では五段動詞には連用形接続になり,ノリッチャイのような言い方が高校生で増えた(地平p.96);→ッチャイ,乗ッチャイ/乗リッチャイ;新乱p.291 ミッテァ 「見たい」;新日p.217 最上p.178 ミッペ/アッペ 「見よう/あるだろう」;山形県の東部で,若い人がミッペ/アッペに変えている;仙台あたりの方言が勢力拡大中なのだろう;地伝いの変化でなく,飛火の可能性もある;老人はミンベ/アンベで,語源の古語「べし」に近い;新資p.63,146〜;最上p.178/新乱p.294/新日p.16,168,195,253;SFp.28;→ミヨウ ミッベ 「見よう」;新乱p.294 →ミッペ 〜ミデンダ 「みたいだ」;鶴岡の若者;元はミデダ;例「山ミデンダ」(口頭報告) 〜ミトーニ 「みたいに」;佐藤1993a:185,1993b 緑ノママサン 「交通専従員」;秋田(柴田1988) 見に 新乱p.303 →ミサ ミミキンカ 新日p.252 見よう 新乱p.294 →ミッベ,ミッペ 妙ナカ/変ナカ 元は「妙ナ/変ナ」;熊本(講座) ミラネー 「見ない」;渡島半島南部の生徒(舟越1970);→ラ行五段化 ミラン 「見ない」;淡路/鳥取/福岡をはじめ西日本各地の若い人がいうようになった;もとは「見ん」といっていたのに;一段活用動詞が「取る」などと同じ五段活用動詞に変わろうとしている;大阪徳島間では淡路島のみにミンデモに代わってミランデモが普及中(友定1994);瀬戸内沿岸(室山1977);下関市若者(岡野1985b) ミリ/読ミリ 「見なさい/読みなさい」;軽い命令を表すのに「り」をつける丁寧な言い方が,全国各地の若い世代,ことに女性に広がっている;大分/広島/愛知/群馬などから報告されている;→〜リ,〜リー ミリン 「見なさい」;やさしい命令形;静岡県新居町でいうが,昭和初期に愛知県豊橋から流行ったものという(山口1994);→イキン,〜リン ミルンベー 「見よう」;群馬県各地で増加,もとはミベー(佐藤1993a:130,1994,篠木1994);→ンベー ミレ 「見ろ」;一段活用動詞の命令形をレで終えるのは,東北地方日本海岸から北海道にかけてと九州西部の方言だった;今九州各地や中部地方などでもミレというようになった;西日本の「見よ」「見い」が方言的だというので共通語の言い方を採用しようとして,単純化した言い方を使ったのだろう;「見れ」だと,「見れば」という言い方と揃うし,五段活用動詞の「取れ」のようにエ段で終わる命令形とも揃う;五段活用動詞に変わろうとしている例;福山の「福山自動車時計博物館」のキャッチフレーズは「のれ,みれ,さわれ,写真撮れ」;「見る」のみは一段活用動詞だからミロまたはミヨになるのがふさわしい;多分新しい表現を採用して脚韻を踏んだ;瀬戸内沿岸(室山1977);新資p.63,122〜;淡路/鳥取/愛媛/福岡/宮崎の若年層(講座);関西の学生も使う(高山1995);沖縄の若年層が,ミレ/オキレ/ステレという(小林他1996) ミレヘン 「見られない(見ることができない)」;京阪神で老人のミラレヘンに代わって進出中;加藤1991;Q p.118f; ミレヘン 「見ない」;元はミン/ミラン;淡路島 ミレナイ 「見られない,見ることができない」;1990年頃吊り広告の「テレビで見れない川崎劇場」が話題になった;コピーライターたちには1段活用動詞の可能動詞の誤用意識がなくなったとみてよい ミレル 「見られる,見ることができる」;東京付近では高年層49%,青年層87%の使用率に増加した;標準語と思っている人も青年層では60%近い(高橋他1994);新日p.9,24,26,33,168,259,295;Q p.117,東京都(国広他1984);→ラ抜き言葉 〜レル ミレレル 「見られる(可能)」;静岡県中部(金田一1977);→ラ抜き言葉,〜レル,ヨメレル ミンチ 井上1996.3:1 ミンベー →ンベー ム 無活用化 形容詞の活用単純化の一傾向;大分県(松田1991:63,187)と宮崎県(講座)の若い世代で報告されている;タケーカロー,タケーナル,タケークナル,タケーネー,タケーデ,タケーカッタ,タケーケリャ,タケーローなど;→イイナル,〜カッタなど;東北北部の方言でもすでに進行している;鶴岡のタッガグナルからタッゲグナルへの変化もそのひとつ ムジー 「むずかしい,むずい」;熊本(吉岡12) ムシャンゴツ 「大変」;熊本(熊本大レポート) ムシャンヨカ 「格好がよい」;熊本の若者がいう;老人の方言を復活させた;熊本方言みやげにあるムシャノヨカ(武者が良い)が本来の言い方だった;熊本(吉岡5) ムズイ 「むずかしい」;1990年ころ金沢の中学生の90%が使った(北国1995);→ムッジー ムツゴイ 「脂っこい,しつこい」;香川県で元は食べ物の味について言われたが,若い人は人の性格や顔についても言うようになった;「意味の拡大」の形をとった新方言である(中井1993) ムッジー 「むずかしい,むずい」;金沢の小学生,以前のムズイは時代遅れとか(北国1995,小林他1996);→ムズイ ムドヘ 「かわいそうだ」;最上p.181;→モドヘ メ メイボ 「ものもらい」;元はメボ,京都府南部の若年層(石田1989);福岡県(岡野1987) メゲル 伊豆半島若者(永瀬1990a);新資p.244,390 メッコ 「かわいい」;山形県酒田付近の若い世代の新方言;老人はメンゴイ;語形をメッコイ系に変えたが,形容詞終止形の語尾イを落とすという方言の特徴は受け継いだ(井上1994);→カル メッコイ 「かわいい」;山形県庄内地方の若い世代の新方言;中年以下はメンコイで,老人はメンゴイ;江戸時代の方言集ではメゴイ;語源は古語のメグシだから,だんだん発音が変わってきている;新日p.165 メッチャ 「大変」;京阪30代以下(近畿1994);京阪中年以下(近畿1994); 井上1996.3:6 メッパ 「ものもらい,麦粒腫」;北海道旭川で増加(小野1988,1992) メバチコ 「ものもらい」;元はメボ,京都府南部の若年層(石田1989);阪神地方の方言メバチコが,今近畿地方各地の若い人に広がっている;老人のメイボなどのわかりやすい言い方は廃れている;愛知県瀬戸市で若い世代にメンボが普及したのと同様,大都市圏の有力な方言に統合されるプロセスである;(熊取町1984,泉南市1994)→メンボ メボー 「ものもらい」;高知周辺部に普及中(高橋1986a) メボイタ 「ものもらい」;老人はメボイトなど;新潟県糸魚川付近(国語研1985:139) メモライ 「ものもらい」;石川県辰口町で増加(加藤1992) メンコイ 「かわいい」;北海道(小野1988);庄内地方;新日p.165 →メッコイ メンドシイ 「面倒だ」←「恥ずかしい」;意味が共通語的に変化した例;大分県(日高1994) メンドッチイ 「面倒な」;首都圏の若者の新方言;東日本の若い世代にも広がっている;西日本の方言では古くからメンドイといって形容動詞を形容詞にしたが,別の形で形容詞にしたわけ;風景p.145 東海p.141; メンボ 「ものもらい」;元はメコジキ;愛知県瀬戸市/上品野町で増加中(瀬戸市1990);メンボは名古屋付近の方言;→メバチコ モ モータープール 「営業用駐車場」;関西および四国の一部で使い,広告や職業別電話帳でも使われる(日高1979);戦後駐留軍の軍事用車両駐車場の意味に使われたのが転じたもの;当時の地図によると東京の大手町にもあった;沖縄県では最近まで米軍用の駐車場の意味で使われていた(琉球新報1992);戦後生まれで「気づかない方言」でもある; 井上1996.3:1,12 モグッチイ 「くすぐったい」;群馬県(佐藤1993a:175) モチョカユイ 「くすぐったい」;下北半島の若者が使用;モチョカリの半共通語形;新日p.90,173 風景p.78 モチョカリ 「くすぐったい」;下北半島の中年以下が使用;もとはモチョコイ,さらに古くはモチョカシと言っていた;カリは青森県南部方言では「かゆい」の意味なので,分かりやすいために,「民間語源」が働いて,辺地からむつ市の方に広がった;1960年代に増えていた言い方が,1980年代にも増え続けていることが確かめられた;新日p.172ff;風景p.77f;徳川/真田1991:108 モッコ 「雪こぶ」;山形県最上地方で,古くからのボッコに代わって進出,擬態語のモコモコの支援があったためか(地平p.83);最上p.176/新乱p.309/新日p.46,162,211,250;→ボッコ モッチョコイ 「くすぐったい」;小樽市付近若年層で増加(見野1993b) モドヘ 「かわいそうだ」;地平p.81 最上p.181;→ムドヘ ものもらい →メイボ,メッパ,メバチコ,メンボ,メボー,メボイタ,メモライ,メンボ 百恵チャンヲ好キダ →〜ヲ好キダ 新資p.250, 439 モロ 「まともに」;若者は全国で使う;中年以上で使うのは,関東地方をはじめとする東日本;中部地方では老人層でも使う;拡大過程が年齢差に表れている;「もろに」も若者は全国的に使っている;新資p.194〜,247,421;東海p.140 モロニ 「まともに」→モロ 新資p.192〜,247,420;東海p.139;伊豆半島(永瀬1990a) ヤ 〜ヤ 「だ」;「ヤ」は,幕末(1840年代)に関西中央部の女性に使われはじめた言い方;明治大正時代に近畿一円に広がり,今も九州各地や中部地方の若い人,特に女性に広がっている;「ジャ」より「ヤ」の方がやさしくひびくらしく,東日本の言い方の「ダ」は,西日本にはなじまないらしい;中学生では西日本で10〜50%程度の使用率で,あまり増えていない(井上1995.1);デアルからデア/デァ/ヂャ/ジャを経てヤへ,それぞれ頭子音が柔らかな方向へ,つまり発音の楽な方向へ変化したと,説明されていた;同時に「あれやこれや」「ありやなしや」とか「花子や!」などの助詞のヤと混同されたとも考えられる;同様にかつてジャが普及したのも,「では」の変化したヂャ/ジャと混同されたためと考えられる;なおヂャ/ジャは江戸時代に発生し,東海道沿線ではほぼ100%近い普及率である(東海p.208);100年以上かけて今も方言の変化が進行している例;古くはジャ,富山県五箇山(真田1990:77),金沢(北国1995);福井の中学女子は100%ヤ(鎌田1991b);兵庫北部(神部1984:224,鎌田1981);姫路市でジャからヤ(鎌田1991);瀬戸内沿岸(室山1977);大阪徳島間ではジャは一部が使うのみで大多数はヤになった(友定1994);日本言語地図では徳島県はジャ;徳島県鳴門市では,ジャ以外にヤが盛んに使われる;女性/若い人に好まれる;〜ヤケン,〜ヤケドともいう;しかし〜ダッタ,〜ダッタラ,〜ダローということからみて,ダが土着でヤが近畿からの移入と考えられる(小野1995);広島市では若い世代でわずかにジャからヤへの変化,山口県小郡まで九州のヤが東進(友定1995);山口県わずか(藤田1990);博多ではヤがよく使われ,もはや関西的とはとらえられない(陣内他1995);タラ/リーと同様に,博多へは関西方言から伝播;「だった,だろう,ではなかった,〜なかった,だ,じゃない,じゃないか」のばあいで,ヤの浸透ぶりが違うが,山口から北九州/佐賀/大分の若年層には進出(小林他1996);熊本県の南部/西部の若者で優勢(吉岡7,吉岡1992,1993);元はジャ(大分市/別府市若男女);大分県の若年層,女子が先に採用(松田1991,日高1994,松田/日高1996),新日p.16,46,168;Q p.143;福岡北部/肥前/香川/福岡(講座);→ソーヤ,ヤオ,ヤッタ,ヤロ,ヤロー,ヤン 井上1996.3:16 〜ャー 「れば」;ミャー,キャー,シャー(見れば,来れば,すれば);元はミリャー,クリャー,スリャー;広島県熊野町(神鳥1989) 〜ヤー 「ねー」「よー」(終助詞);鶴岡で「シテヤー,オレヤー」などは,昔はザイゴ(田舎,農村)の言い方と言われた;昭和30年代の高校生の間では当り前だったから,すでにとうのたった新方言;ヤーにかわる元々の言い方はノーだけだから,新たな使い分けが生じたことになる(口頭報告) 〜ヤ(ー)カ 「だろうか」;北九州市若年層(岡野1992b) ヤーガ 「きみ」;ヤー(家)とイャー(君)を区別して発音すべきだが,できない;沖縄県の高校生(儀間1987);喉頭閉鎖音の音韻的区別が失われつつある過程を反映する 〜ヤオ 「だろう」;高知周辺部の若年層に普及中,元は(雨)ニカーラン(高橋1986a);ヤロの変化? ヤキモン 「せともの」;大阪徳島間でカラツ(モン)セトモノに代わってヤキモン/ヤキモノが普及中(友定1994) 〜ヤケ 「だから」;下関若年層(岡野1992b) 〜ヤケン 「だから」;徳島県でジャケンに代わってヤケンが普及中(友定1994) ヤスイガッタラ 「安いなら」;最上p.180 安いなら →ヤスゲンバ,ヤスイガッタラ 最上p.180 →ヤスエゴンバ,〜ゴンパ,〜ゴッパ,〜ゲンパ,〜ガッタラ;新乱p.296 ヤスエゴンバ 「安いなら」;新乱p.296 ヤスクデ 「安く」;鹿児島市で「安くで譲って下さい」「高くで買います」など;広告でもみるというから,地方共通語(木部1995);〜クデ ヤスゲンバ 「安いなら」;最上p.180 ヤゼカ 「めんどうくさい,けだるい」;「ヤゼラシカ」の短縮;長崎県(熊本大レポート) ヤダ 「いやだ」;「ヤナヤツ」のように活用;東京での音縮約形;→ヤンナル ヤッキナイ 「やる気がない」;金沢の若者;1990年頃の調査で,青年層は90%近くが使うが,壮年老年ではゼロだった(北国1995) ヤッケ 「柔らかい」;山形県酒田市の小学生でヤッコイに代わって進出(井上1994) ヤッコイ 「柔らかい」;山形県大鳥地区でヨーコイに代わって進出;ヨッコイという混交形も生み出した;新日p.166 〜ヤッサー 「よ(終助詞)」;沖縄県の高校生(儀間1987) ヤッスエ〜 「安い〜」;新乱p.296 〜ヤッタ 「だった」;元はジャッタ;大分市/別府市若男女;福岡・佐賀・長崎・鹿児島の若者に進出(九州1969);福岡県(陣内1993:95);淡路島と徳島県でダッタに代わってヤッタが普及中(友定1994);→ヤ ヤッチャ 「大変」;長崎県島原地方(熊本大レポート) ヤッパ 「やはり」;東京の若者がくずれた感じでいう(中野1986);今は神奈川県はじめ全国各地の若者に広がっている;中部地方や九州などではもともとの方言で,お年寄りも普通の方言として平気で使う;房総南端の中学生では約半数が使用(昭和1994);東海地方から東京に進出した(地平p.30,東海p.132);新資p.54〜,247,415/東神p.74;SFp.62;東京都(山敷1982,国広他1984);神奈川県(田中1991);伊豆半島(永瀬1990a);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:70);江戸の船頭の用例「やっぱ櫓か」があるから,一部の社会では使われていたのか(杉本1988:242) ヤッパシ 「やはり」;東京の若い世代のことばでよく出るし,全国の若者に広く使われる;中部地方や西日本の方言では,昔から盛んに使われていた;東京の口語に逆流したのだろう;千葉県市原市(藤原1979);新資p.52〜,247,414/東神p.75 東海p.133;東京都(山敷1982,国広他1984) ヤッベー 井上1996.3:10 ヤバイ 東神p.87 東京都(国広他1984) ヤビャー 「危ない,ヤバイ」;熊本(吉岡5) 山だろう 新乱p.295;→ダッペ 山ダベ 新乱p.295;→ダベ ヤム 「痛む」;父母はヤメル;北海道札幌(小野1988,1992);小樽市若年層で増加(見野1992) 〜ヤロ 「だろう」;元はジャロー; 島根若女,大分市/別府市若男女;熊本県の南部/西部の若者で優勢(吉岡5)→ヤ 〜ヤロー 「だろう」;岐阜県で中年以下が採用;老人はジャロー;Qp.145;淡路島/徳島県でダローに代わってヤローが普及中(友定1994);福岡県の若者に「派手ヤロー」が増加(陣内1993:74,94);→派手ヤロー,→ヤ 〜ヤロー/ヤッタ 元はジャロー/ジャッタ;徳島/福岡(講座) 〜ヤン 「ではないか」;関西でジャンの代わりに「エーヤン」「アルヤン」のように使う;若者では中部や四国九州にも広がっている;関西では「山だ」を「山ヤ」のようにいうので,デハ→ヤになった;泉南市1991;阪神間淡路島で普及,今は大多数(友定1994);山口県で増加(藤田1990);下関市,北九州市全域の高校生使用,近畿新方言の伝播(岡野1996a);新日p.288,282;福岡県の若者に増加(陣内1993:102,110) 〜ヤンカ 「ではないか」;大阪では「明治か大正のころ若い女性間に生まれ」た(前田1977);「昭和の初年頃か,大正の末年頃から,大阪の若い婦人のあいだに・・・生まれ・・・流行し・・・」(楳垣);滋賀〜兵庫の中年以下に普及(Q p.132);大阪と兵庫東部中年以下(真田1993);京阪では老人も(近畿1994);泉南市1991;佐藤1990;新日p.262,288; 井上1996.3:15 ヤンナル 「いやになる」;東京での音縮約形;漫談の「アー,やんなっちゃった,アーアーアーアー,驚いた」で有名になった;→ヤダ ユ ユー 「あなた」;戦後まもなくの新沖縄口,年齢によってウンジュ(あなた)/イャー(お前)を使い分ける必要がなくて便利だったが消えてしまった(儀間1987:270) 〜ユー 「ている(進行態)」;高知県で周辺部の若者へも伝播,元はフリヨルなど(高橋1986b) 優秀カ 「優秀だ」;九州;藤原1992:63 雪こぶ →モッコ,ボッコ;最上p.176/新乱p.309 ユタンポ(コ) 「いたどり」;香川県引田町で,老人のイタンポ(コ)から変化;「湯たんぽ」との類音牽引か(中井1993) ユッタ 「言った」;新資p.118,245,401 ヨ 〜ヨー 「ねえ(終助詞)」;神奈川から東京に流入(金田一1983,初出1955);北九州の若者ことばで「イッタンヨー」「イッタンデスヨー」のようにいう(岡野私信1994) 〜ヨー 「〜ている」;ヨルのルの変化;トルからトーへの変化と平行的;→トー ヨーサン 「沢山」;関西各地,特に神戸付近と滋賀県の中年以下に時に聞かれる新しい言い方;西日本に盛んなギョーサンとヨーケが混同されて,前半と後半をつきまぜてできあがったと思われる;琵琶湖沿岸(佐藤1978);京阪中年以下(近畿1994);Q p.72 幼稚ッポイ →〜ッポイ 新資p.246,411 ヨエー 「弱い」;房総南端の中学生では1割近くが使用,中年以上はヨワェー(昭和1994);東京ではウェは保たれている;→ハエー/ツエー 〜ヨク 「ている(進行態),〜ておく」;西日本各地で新発生した言いいかた;西日本では進行態〜ヨルと完了態〜トル(チョル)の区別がある;この進行を示していた「ヨル」と老人も使う「チョク」との混交によって生じた;これでヨル:チョル=ヨク:チョクというセットができた;「先にタベヨク」は進行で「先に食べ始めておく」の意味;大分県若年層(田口1992,日高1994);北九州市では10年ほど前から(木部1994教示),土佐中村市の一部(高橋口頭1994);和歌山でも?→チョク,ヨー よくない →イクナイ 東神p.79 ヨコハイリ 「割り込み」;首都圏では神奈川の若い世代が言うが,東京都内,山の手でも使う人が出てきた;東海道沿線では中年以下にまんべんなく使われる;ほかに西日本各地で言う;若い世代では,使用地域がさらに広がり,中国地方から関東地方にかけてと北海道でもよく使われる;横から入り込むのだから,わかりやすい命名で,今後もさらに広がる可能性がある;新語が地方に先に普及し,東京が遅れた例である;新資p.63,104〜,東海p.115;→ズルコミ ヨゴイ 「かゆい」;元はヨゴサ;奄美で1960年代の子どもが使用(倉井1987) ヨゴヘ 「よこせ,渡せ」;山形県酒田市付近の青年層で多い;ヨゴセのセがヘに変わったもの(井上1994) ヨッコイ →ヤッコイ 〜ヨマイ 「〜よう」;ミヨマイ/シヨマイなど;愛知/岐阜付近の中年層で増えるが,少年層は共通語化(井上1995.4);→イコマイ,〜マイ ヨミキエン 「読めない」;元はヨミキラン+ヨミエン;長崎県各地(講座) ヨムケド 「〜けれども」;新資p.58〜 →ケド ヨムデモ 「読むけれども」;山形県庄内地方の新方言;老人はヨムドモで,古語の「読めども」にさかのぼる由緒ある言い方だった;共通語の接続詞「でも・・・・」の影響を受けてできあがったのだろう(井上1994);→デモ ヨムンデモ 「読むけれども」;山形県酒田市の新方言;元はヨムドモ;共通語の接続詞「でも・・・・」の影響を受けてできあがったのだろう(井上1994);→ンデモ ヨムンドモ 「読むけれども」;山形県酒田市の新方言;元はヨムドモ;鶴岡にも及んでいる(井上1994);→ンドモ ヨメレル 「読める」;静岡県中部(金田一1977);→ラ抜き言葉 〜レル,カケレル ヨユーデ 「余裕をもって,ゆったり」;首都圏の若い人がいう 〜ヨル 「ている(進行態)」;山口でチョルからヨルへ変化(藤田他1990);沖縄で老人が共通語場面で使い,中学生も共通語と思って使う;ただし進行態かどうか未詳(井上1995.2);沖縄の若年層が使う;「行きよった(行っていた),遊びよった(遊んでいた)」など(小林他1996) 〜ヨン 「ている(進行態)」;シヨンなど;大分でヨルから変化(大分1992) ラ 〜ラ 「と」;佐藤1993a:126,1993b;→ポーンラ,リ 〜ラ 「〜だろう」;「無イラ,イイラ」など;元はナカラズ,ヨカラズ;山梨県(吉田1994) ラーフル 「黒板消し」;鹿児島/宮崎; 井上1996.3:3 ラ行五段化 →五段化/愛媛で;鹿児島では若い世代に多い(木部1995);ただし文体差不明;地方共通語か;萩市相島で進行中(岡野1996b) ラクイ 「楽な」;九州北部西部で元ラクカと言っていたので,形容詞カ語尾をイ語尾に変える過程で過剰修正した(陣内1992);→イ語尾 〜ラズ 「〜させる」;沖縄県の新方言で,1段活用動詞などの使役形;見ラス/寝ラス/来ラスなど(永田1991) 〜ラッタ 3人称につける軽い敬語;「買ワラッタ(買った),受カラッタ(受かった)」;熊本市(熊本大レポート) 〜ラナ 「〜なければ」;一段動詞の五段化;北部九州でまれに(陣内1989) ラ抜き言葉 一段活用動詞の可能動詞(渋谷1993)の俗称;東京では使用頻度数の多い,短い動詞から先に普及している;元は〜ラレル(新潟);中四国各地,中部各地,北海道ではいち早く普及した(国語研1982);→〜レル →イキレル,イレル,オキレル,カケレル,カリレル,キレル,コレル,食ベレル/逃ゲレル,デレル,ナゲレル,ニレル,ネレル;→ノメラレル,ノメレル 〜ラン 「〜ない」;一段動詞の五段化;キラン/キラヘン,ミラヘンなど;兵庫県下全般的に進行(鎌田1991);北部九州で使う人あり(陣内1989)→ミラン 〜ランドッテ 「〜ないでいて」;一段動詞の五段化;タベランドッテ/オキランドッテなど,北部九州で使う人あり(陣内1989) リ 〜リ 「と」;ドーンリ,ポーンリ(佐藤1993a:122,1993b,1994)→ラ 〜リ 「〜なさい」;北部九州(陣内1989,1996);下関市/北九州市(岡野1991b,1996a);→ミリ,タベリ 〜リー 「〜なさい」;ミリー,オキリー,デリー,タベリーなど;元はオキーなど;下関市/北九州市の若年層(岡野1991,1992b);下関市/北九州市の少女たちが使いはじめたのは50年前ごろ,1965年に報告した;九州では豊前筑前出身者が使う(岡野1991b,1996a);群馬県南部の女子供がミセリー,サセリー,デリー,カンガエリーなどという(小島1948,群馬);各地に類例がある(岡野1991b);博多で以前はマガンシャイ,今はマガリー(曲がりなさい)(小林他1996);→ミリ,リンナ リバテープ 「救急絆創膏,バンドエイド」;九州各地,沖縄県(高橋他1996,小林他1996);→サビオ,カットバン リ/リー語尾命令形 「〜なさい」;ミリー,オキリー,デリーなど(岡野1991b,1996a);→リ,リー 〜リン 「〜なさい」;ニゲリン(逃げなさい),ミリン(見なさい),シリン(しなさい)など;愛知県東部(江端1985);愛知県ではジャン/ダラ/リンを特徴的なことばというが,すべて新方言である;静岡県新居町でいうが,昭和初期に愛知県豊橋から流行ったものという(山口1994);→イキン,タベリン 〜リンナ 「〜なさるな」;下関付近の少女が「オキリンナ」などのようにいう(岡野1991b) 立派カ →元気イ レ レーコー 「アイスコーヒー」;東海p.114 〜レヘン 「ない」;ミレヘン(見ない)など;泉南市1991 〜レル →飲メレル 〜レル 正しい日本語は〜ラレル;新潟,その他西日本全般;東京でも若い人に広がっている(渋谷1993);→ラ抜き言葉 ロ 〜ロ 「〜よう」;一段動詞の五段化;ミロカ,オキロカ,ウケロカなど;兵庫県下全般的に進行(鎌田1991) 〜ロー 「〜よう」;一段動詞の五段化;ミロー,オキローなど;北部九州(陣内1989) ロッカク 「自転車後輪の軸の左右に伸ばした棒」;ここに足を載せて二人乗りする;大阪市(岸江1988) ロンパリ 「斜視」;ロンドンパリの略;最上p.175/新日p.57,70,90,161,252 新日p.208,252 ワ 〜ワ (ガ) デクッ 鹿児島青少年層(講座);→ガデキル ワイ 「あなた」;以前はワリ;富山県五箇山(真田1987:235,真田1990:73,真田1996) ワイチャー 「わーすごい」;古方言「わいたー」の改新;熊本(吉岡12) 若者語(若者ことば) 若者に特に多く使われることば,若者に愛用されることば;流行語,学生の隠語,キャンパスことば;毎年資料が出て,最近は大学ごとの辞典も刊行されている;毎年新しい言い方が生産される;地域差は意外に少ない(井上1994);なお「硬派の新語」は若者ことばから省く方がいい;新方言も,狭義の若者ことば集では扱われないことが多い;つまり「スラング」が若者ことばの典型である わからない 新乱p.286 →ワカンネ,ワカレヘン ワカレヘン 「わからない」;西部方言では元々はワカラン,関西でワカラヘンになるが,さらに変化してワカレヘンになった(地平p.141);大阪でカケヘン/イケヘンのように五段活用動詞の否定形が変化した過程の一部;→カケヘン,ヘン ワカンナイ 「わからない」;東日本の方言ではよく動詞のラがンになるが,まずワカンナイが標準語の本拠地東京の若者に流入した;西日本の若者にも使われる;ワカランが西日本の本来の言い方だが;同じラ行五段活用の動詞でも,フンナイ,カワンナイ,マモンナイなどの流入は遅れている;よく使われることばから変化が進むことの例;群馬の大学生のほぼ全員が使い,「俗語/流行語」と意識;老人の群馬方言のワカンネーと別のものと意識している(山県1988);なお,ワガンネが山形県庄内地方の若い世代で増えているのも同類;老人はワガラネ;大分県ではわずか(柴田1991);福岡県にも使用者が出ている(陣内1993:32);新資p.44〜,248,429/新日p.4ff,6,130;SFp.21/東海p.117 ワカンネー →ワカンナイ 新資p.44〜,248,429 ワカンネ 「わからない」;最上p.179/新乱p.286 ワガンネ 「わからない」;山形県庄内地方の若い世代で増加中;地域差年齢差をみると鶴岡酒田中心にピラミッド型に分布し,最近5,60年内に(山形県内陸地方から)飛び火の形で伝播したと考えられる(井上1994);新日p.4f,252,252;→フンネ ワタリ鉄棒 東神p.40 ワッカ 「輪」;新資p.244,381 ワッゲー 「大変」;鹿児島,ワッゼーの変異形(木部1995);→ワッゼー ワッゼ 「大変」;鹿児島(熊本大レポート) ワッゼー 「大変」;鹿児島の若い男(木部1995);『鹿児島方言辞典』(1935)にワゼシコあり;「災い」の変化という(上村1987);→ワッゲー ワラー 「おひや,水」;英語waterから;沖縄県(柴田1988) 笑い上戸 →ゲラッパ 新乱p.310 笑インチャイ 元は〜ンサイ;島根/広島(講座) ワリカシ(イイ) 「わりに」;伊豆半島(永瀬1990a);新資p.247,418/東神p.70 ワリカタ(イイ) 「わりに」;東神p.71 割り込み →ヨコハイリ,ズルコミ,東神p.52 ワリト 「わりに」;新資p.271,419 ワルタ 「笑った」;元はワロータ;五島/若(講座) ワンパ 伊豆半島若者の一部(永瀬1990a);新資p.244,384/東神p.61/新乱p.315 →ワンパターン ワンパターン 新資p.102,244,383/東神p.61/新乱p.315 東海p.126 →ワンパ ヲ 〜ヲ話セル →英語ヲ話セル 新資p.202,249,437 〜ヲ好キダ →百恵チャンヲ好キダ 新資p.206〜,250,439 〜ヲホシイ →水ヲホシイ 新資p.204〜,279,438 ン 〜ン 「ル」;動詞のルが撥音化して「ン」になるのは,大島元町の青年層に著しかった(加藤1960) 〜ン 「の」;「赤インガホシイ」など;山口県の若年層で増加;元はホ/ソ;(藤田他1990);福岡県小倉の若者に増加;元はト(陣内1993:102,112);→ンダ 〜ン 「〜なさい」;やさしい命令形;静岡県新居町に昭和初期に愛知県豊橋から流行った(山口1994);→イキン,ミリン,〜リン 〜ンカッタ 「〜なかった」;イカンカッタなど,動詞の打ち消し過去で;石川県(加藤1992);岐阜/滋賀,大阪〜岡山の若年層に普及(真田1991,1993);神鳥1989;岡山県新見市若年層(友定1993);山口県で増加(藤田他1990);下関市/北九州市(岡野1991,1996a);瀬戸内沿岸(室山1977);大分/宮崎/鹿児島の若者に進出(九州1969);鹿児島の若年層(南日本1984);大分県の若年層(松田1991);福岡県の若者にオランカッタが増加(陣内1993:74,92);→行カンカッタ,カカンカッタ,コンカッタ,シンカッタ,センカッタ →カカヘンカッタ,カケヘンカッタ,〜ヘンカッタ 〜ンクナル 「〜なくなる」;「行カンクナル」など;西日本で「〜ン」の分布する地域の若い世代に拡大中;近畿では「行カヘンクナル」,中四国九州では「センクナル」なども使われる(時見1995);関西ではアカンクナル/イカンクナルなどというようになった(真田1996) 〜ンケレバ 「〜なければ」;新方言でなく,明治時代の東京語に出現;様々な西日本的表現が流入/混交したのか(田中1969) 〜ンシャル 福岡周辺女性;元は〜ンナル/〜ナサル 〜ンス 「〜なさる」;→キランシタ 〜ンダ 「(俺)ノダ」;新乱p.304 →ン 〜ンダガラ 新乱p.301 →〜ダカラ 〜ントイケン 「〜なければならない」;瀬戸内沿岸(室山1977) 〜ンデ 元は〜イデ;広島(講座) 〜ンデモ 「〜けれども」;山形県酒田市付近で;「読むんでも」は増えているが,「寒いんでも」は減りはじめている(井上1994);→ヨムンデモ,ンドモ,デモ 〜ンデモ 「〜ないでも」;「行カンデモ」など;元は〜イデモ;四国全体/岡山の若年層(高橋1991) 〜ンドコー 「〜ことにしよう」;関西弁のントコの影響か,北九州市若年層(岡野1992b) 〜ントナラン 「〜なければならない」;沖縄県の新方言で(永田1991) 〜ンドモ 「〜けれども」;山形県酒田市付近で「読むんども」が増えている;鶴岡市付近では「寒いんども」が増えている(井上1994);→ヨムンドモ,ンデモ,デモ ンナゴッタ,ンダコッタラ 「それならば」;最上p.177 〜ンナダ 「(俺)のだ」;新乱p.304 〜ンニャ 「〜なければ」;元は〜ニャ;山口/広島の山陽道沿い(室山1977);→アルカンニャ 〜ンニャイカン 「〜なければならない」;瀬戸内沿岸(室山1977) 〜ンニャイケン 「〜なければならない」;瀬戸内沿岸(室山1977) 〜ンネー 「〜ねえ(終助詞)」;「アツインネー」が群馬県中央部の若い女性に広がる(神田1983);「ねえ」にくらべて親しみを表すという;→ンベー 〜ンネー 「〜でないか」;鶴岡方言の〜デネーの変化(伊達口頭);「〜グレンネー=〜くらいでないか」など 〜ンベー 「う」;元はベイ;群馬県沼田市(篠木1984);群馬県中央部(佐藤1993a:130,1994,篠木1994);→ミルンベー,ミンベー,イクンベー,クルンベー,オモシレンベー 〜ンメ 「〜ないだろう」;イカンメなど;元はイクメ;北部九州(陣内1989) 〜ンメー 「〜ないだろう」;コンメー,イカンメー,アイトランメーなど;元はクメー,コンジャロー;福岡県(岡野1988a,1987);大分県の若年層で増加(堀1994)→イカメー, イカンメー,イキメッカ 〜ンヤッタ 「〜なかった」;「行カンヤッタ」など;元はイカジャッタ,イカンジャッタ;下関市/北九州市(岡野1991);福岡県(岡野1987);福岡/佐賀/長崎の若者に進出(九州1969);大分県の若年層(松田1991);助動詞のジャ→ヤの変化と連動 〜ンヨ 「のよ」;ムズカシインヨなど;下関市/北九州市(岡野1991)